研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05222
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松本 拓也 神戸大学, 工学研究科, 助教 (70758078)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高分子表面 / 着氷性 / 不凍効果 / ポリ置換メチレン |
研究実績の概要 |
本申請研究は,固体状態で動きが極度に制御されている水分子である氷と,側鎖のすべての炭素にカルボン酸などの親水基を有する高分子との分子的相互作用を,側鎖密度から評価・解析する研究である。氷と高分子の関係は,不凍液としての性能や寒冷地の家屋や航空機の積雪・着氷の面で工業的にも重要となる。本申請研究では,氷と高分子の分子的な相互作用について,高分子の側鎖の密度の観点からアプローチし,高分子表面や高分子存在下での氷の形成過程やバルクの氷との相互作用を評価し,側鎖が水分子に与える影響を解明することを目的としている。 2020年度として,側鎖にカルボン酸を有するポリ置換メチレンを合成するとともに,着氷力の評価システムを構築し,ポリ置換メチレンの着氷性を評価した。ポリ置換メチレンは,エステル基を側鎖に持つ高分子をロジウム触媒下で重合することで合成した。その後,加熱酸条件下で,加水分解することで,側鎖をカルボン酸に変換し,目的のポリ置換メチレンを合成した。合成した高分子はNMRや赤外分光法により同定した。 さらに,着氷性の評価のために,専用のせん断治具を設計・作製した。この治具を利用することで,高分子薄膜上での氷中のせん断剥離強度を精密に評価可能となった。合成した側鎖にカルボン酸を有するポリ置換メチレンと,その比較としてポリアクリル酸を用いて着氷力を評価したところ,ポリ置換メチレンの方が着氷力が低く,除氷性が優れていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,2020年の4月~6月に置いて,コロナウイルスに感染拡大の影響により,実験停止期間があったが,その間に治具の設計や綿密な実験計画を練ることで,実験再開後の実験・研究の効率化をはかり,計画通りに研究を進捗している。 また,本研究関連での発表を国内の学術会議で2件しており,次年度も今年度成果をすでに国内の学術会議で2件予定しており,国際学術誌への論文投稿の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,,氷の作製条件や高分子薄膜の作製法による着氷力の変化を評価する。またカルボン酸を側鎖に持つポリ置換メチレン薄膜と固体の水である氷の界面の評価のために,中性子反射率を利用した測定・解析を進める。さらに,ラマン分光を利用した氷結過程の水の変化の解析にも取り組む。 加えて,本研究では,カルボン酸を側鎖に持つポリ置換メチレンを利用することから,カルボン酸と相互作用するような種々カチオンを添加することで,凍結過程の評価や着氷力への影響の解明に取り組んでいく。 さらに,共同研究として合成したポリ置換メチレンの吸湿性の評価のために,湿潤条件下での中性子反射率やX線反射率,水晶振動子による重量変化測定などにも取り組んでいく。
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