本研究では,固体状態で動きが極度に制御されている水分子である氷と,側鎖のすべての炭素にカルボン酸などの親水基を有する高分子との分子的相互作用を,側鎖密度から評価・解析することを目的としている。氷と高分子の関係は,不凍液としての性能や寒冷地の家屋や航空機の積雪・着氷の面で工業的にも重要となる。本申請研究では,氷と高分子の分子的な相互作用について,高分子の側鎖の密度の観点からアプローチし,高分子表面や高分子存在下での氷の形成過程やバルクの氷との相互作用を評価し,側鎖が水分子に与える影響を解明することを目的としている。 2021年度としては,側鎖にエステル基を有するポリ置換メチレンの加水分解により,側鎖にカルボキシ基を有するポリ置換メチレンを合成した。また,その薄膜を作製し,着氷強度を評価したところ,ポリアクリル酸と比較して強度が低下していた。さらに不凍水の評価に取り組んだところ,ポリ置換メチレンはより多くの不透水量を有することが確認できた。これは,側鎖に高密度に集積されたカルボン酸によって,より多くの水分子と相互作用したためと考えられた。 さらに,共同研究として水と接触時の高分子の表面膨潤層の形成とそこに含有される部図分子の量が低下し,固液界面のコントラストが明確化することで,表面の疎水性が増加することが確認できた。加えて側鎖にカルボン酸を有するポリ置換メチレン薄膜高湿度条件下における薄膜の構造評価にも取り組み,アクリル酸薄膜と比較してより多くの水分子を含むことが確認できた。
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