1年目においては、提案書で解明しようとしていた伸縮率が600%程度になるゲルについて、反応性の異なるビニル基を組み合わせた3種類の架橋剤に関し、それぞれの架橋剤の有無によって、透明性や膨潤度に影響することを報告した。 2年目においては、ワンポッドでIPNを調製する新手法について、さらに反応メカニズムを明らかとし、高強度の新しい保水材を創製することを目指した。N-ビニルアミドを含む二種類の反応性の異なるビニル基が結合した架橋剤を利用の効果を、種々のゲルを調整することで調べた。まず、エチルアクリレートとN-ビニルホルムアミドを部分構造とする架橋剤では、各ビニル基に反応性の差が確認されたものの、ハイドロゲル強度に及ぼす影響に有意な差が見いだされなかった。次に、N-ビニルホルムアミドの代わりにN-ビニルアセトアミドを用いたところ、透明かつ高い伸縮性のハイドロゲルが得られた。これをTEM観察したところ、数十nmレベルの相分離構造が観測された。これらの結果から、ゲルの均一性に架橋剤構造はある程度効果を示す一方で、高伸縮性の主な要因はメチル基の小さな疎水性凝集形成とその均一性であることが示唆された。この考え方に基づき、疎水性凝集を制御し、両親媒性N-ビニルアミドとエチルアクリレートを用いて、ワンポッドで透明性が高く伸び率3000%程度の高い伸縮性のハイドロゲルを調製することができた。 また、このように二種類のモノマーで親水性疎水性のわずかな違いのバランスを取り、ゲルを高強度化する本手法は、ポリウレタンのゲルへと展開した。
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