チタン系金属材料、特に、Ti-6Al-4Vという整形外科領域でも使用されるチタン合金に関しても、純チタンの場合と同様、同じ化学処理により生体組織への接着能力が高まるのかについて検討を進めた。その結果、純チタンの場合よりも低い接着力を示すことが明らかとなった。この理由として全体のチタン量の減少にともなう水素化チタン量の絶対量の減少が考えられた。また、被着材同士の接着面積向上や凹凸構造の付加を目指し、サンドブラスト処理を行うことで、マルチスケールの凹凸構造作製ならびに表面積の増加に成功し、結果として、2倍以上の接着強さ獲得につながった。この接着強さは、現在使用されている生体組織接着剤として最も高い接着力を示すシアノアクリレート系接着剤と同等の接着強さであり、高い実用性が期待できる。また、使用する合金の種類、化学修飾の程度、物理修飾の程度により、その接着強さを約10 kPaから100 kPaの範囲で制御できることが示された。 このチタン接着材の接着メカニズムは骨形成過程における無機アパタイトと基質有機質との接着に相関性があることから、無機アパタイトと生体組織との接着時における機械的特性の変化ならびに水分含有量、水和相割合の変化などを検討した。その結果、水分含有量に基づく、生体軟組織の機械的特性変化が明確になった。これらの結果は、これまでにない無機/有機複合体の提案につながるものと期待できる。 これら研究に関して、本年度はこれまでのところ2件の原著論文発表、1件の総説論文発表、2件の招待講演を行った。
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