研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05227
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
都留 稔了 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (20201642)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膜 / ナノ-サブナノ多孔 / オルガノシリカ / 分離 / 気相 |
研究実績の概要 |
河川などの淡水のみならず海水などの液相から,膜分離法による水製造プロセスの実用化が進んでいる。今後は,気相中に存在する水蒸気についても,水資源あるいはエネルギー資源として回収する新技術を開発する必要があると考える。本研究では,より効率的に”水をつくる”ことを最終目標として,サブナノ多孔性材料における水分子希薄系から凝縮系状態まで広い範囲に渡り,そのマトリックスでの動的挙動として膜透過性を広範囲で測定する。さらに,赤外分光法,吸着法などの特性評価技術を駆使して,サブナノ多孔材料での動的挙動を明らかにするとともに,より高選択性・高透過性水分離膜の開発指針を得る。 2020年度の成果は以下にまとめられる。 ・分離層としてbis(triethoxysilyl)ethane (BTESE)を用い,中間層として従来法であるSiO2-ZrO2,および新規にコロイドBTESEから作製したiBTESEを用いることで,BTESE/SiO2-ZrO2膜およびBTESE/iBTESE膜の製膜に成功した。さらに,それら二種類のBTESE膜はほぼ同等の気体分離性を示すことを明らかとした。 ・BTESE/SiO2-ZrO2膜およびBTESE/iBTESE膜を水蒸気回収実験に用いて,気相から水蒸気を回収できることを明らかとした。 ・BTESE/iBTESE膜は高い水熱安定性を示すこと(水蒸気圧 上流200kPa,下流100kPa;300時間以上),高い水蒸気/窒素選択性を示すこと(>100)を明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BTESE/iBTESE膜の製膜に成功し,気相から水蒸気を回収できることを明らかにした。さらに150℃,水蒸気圧50kPa以上での水熱安定性試験を行い,高い分離性能を300h以上にわたって維持することを明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,より効率的に”水をつくる”ことを最終目標として,サブナノ多孔性膜における水分子の動的挙動として,水分子希薄系から凝縮系状態まで10℃~400℃にわたる広範囲において,純水系および2成分混合系での膜透過性を測定する。さらに,赤外分光法,吸着法などの特性評価技術を駆使して,サブナノ多孔材料での動的挙動を明らかにするとともに,より高選択性・高透過性水分離膜の開発指針を明らかとすることを研究目的とする。今後の研究計画は以下による。
(1) 膜分離性の向上:2020年度に引き続き,オルガノシリカ膜の最適化により,高温下での選択性・透過性および膜安定性を向上させる。具体的には,オルガノシリカに異種金属のドープおよび異なる有機架橋基について検討する。
(2)高選択透過性の学理の理解:膜分離では供給側および透過側を,液相/液相とする逆浸透(RO),液相/気相とする浸透気化(PV),気相/気相とする蒸気透過(VP)での透過性の評価が可能である。膜移動の駆動力は水の圧力差であり,単位圧力当たりの流束で定義される透過率(単位は,mol/(m2 s Pa))を測定する。任意の温度および圧力で,供給および透過側で気相および液相としての相を制御することで,VPでの透過率とROでの透過率を比較することで,サブナノ細孔内の水分子の運動性を評価する。
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