研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05230
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三浦 佳子 九州大学, 工学研究院, 教授 (00335069)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水溶性ブロック共重合体 / 両親水性高分子 / 自己組織化 / 超分子 / 温度応答性 |
研究実績の概要 |
水溶性ブロック共重合体からなる、両親水性高分子を調製し、水溶液中にもかかわらず分子集合体を形成することを明らかにした。今年度研究では、その分子の一次構造と水溶液中での分子集合体特性の相関について特に注力して研究を行った。 ポリエチレングリコール(PEG)とマンノースを側鎖に有するポリメタクリレート誘導体からなるブロック共重合体を合成した。合成はポリエチレングリコールを有するマクロRAFTを調製した後に、糖鎖高分子部分をリビングラジカル重合して、研究で用いた分子の調製を行った。これらの分子の水溶液中での集合体形成能について、動的光散乱、透過型電子顕微鏡によって調べたところ、糖鎖高分子部分とPEGが一定の割合にある場合には分子集合体を形成することが明らかになった。その一定の比率を外れると膜として凝集したり、一分子で溶解することが明らかになった。また、集合体形成は糖部分の水素結合、またはカルシウムを介したキレートに寄っていることがわかった。 また、分子集合体の形成は温度応答的であり、4℃付近まで冷却すると集合体を形成し、その後徐々に加温すると分子集合体の合一により、数10nmの径を持つ分子集合体として調製されることが明らかとなった。温度応答性はUCST挙動であると考えられた。 また、ブロック共重合体の組成と集合体の形態を検討した。両親媒性の高分子であれば、ブロックの比率によっては棒状ミセルなどの種々の形態をとるが、水溶性ブロック共重合体では、すべて球状の分子集合体として観察され、多様な形態は形成しないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水溶性ブロック共重合体によって、特異な分子集合体を水溶液中で形成することを明らかにした。また、種々の分子の合成とその分子集合体形成を検討することによって、どのような分子が自己組織化するかについて、一定の原理を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
水溶性ブロック共重合体による分子集合体の形成を観察することができているが、かなりの低温で形成させなくてはならない。分子構造について糖部分、PEG鎖長をさらに検討することで、常温で安定な分子集合体の形成にチャレンジする。同時に、詳細な自己組織化構造が不明であることから、領域内の共同研究者とともに構造解析を進めていく。
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