研究領域 | 地下から解き明かす宇宙の歴史と物質の進化 |
研究課題/領域番号 |
20H05241
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
福田 善之 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (40272520)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 二重ベータ崩壊 / チェレンコフ光 / 位相幾何学(トポロジー) / 半減期 / バックグラウンド |
研究実績の概要 |
本研究では、Zr-96を用いたニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊事象を10の27乗年以上の半減期での観測を実現するため、チェレンコフ光の位相幾何学情報を用いて背景事象であるTl-208のβγ事象を95%除去できることを実証することを目的としている。チェレンコフ光の位相幾何学情報である平均角を計測するためには、シンチレーション光と共にチェレンコフ光を受光した光電子増倍管を選別する必要がある。そこで、信号波形の立ち上がり方が異なることを利用して、チェレンコフ光の有無を判断する波形分別法を開発するため、ZICOS用液体シンチレータ中に発生する電子が放出するシンチレーション光とチェレンコフ光の波形を観測した。まず、UNI-ZICOS検出器に用いる3/8インチ光電子増倍管H3164-12(上昇時間:0.8ns、TTS:0.5ns)をZICOS実験用液体シンチレータを充填した20mLバイアルに8本接続し、Co-60、Cs-137、Ba-133、Co-57からのエネルギーの異なるガンマ線を入射させ、CAEN製V1751(2GS/s)デジタイザを用いてパルス波形を計測した。ここで、チェレンコフ光を放射するエネルギー閾値以下であるCo-57の波形はシンチレーション光のみと考えられるため、他のガンマ線による波形と比べたところ、波形のピークを60nsとした時の57.5nsecから58.5nsecの3ビンの波形に相違が確認された。ただし、統計的に明確に区別するためには若干の修正が必要であった。そこで、波形観測のサンプリングが5GS/sであるV1742を用いれば、0.2ns毎の波形が観測可能であり、波形分別法は開発できると考えている。この手法を用いることにより、UNI-ZICOS検出器により得られるCo-60のβγ事象による平均角と単体の電子の平均角が異なることを観測する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
UNI-ZICOSに使用する3/8インチ光電子増倍管H3164-12を用いてチェレンコフ光の有無を判断する波形分別法を開発したところ、十分な性能を得ることができなかったが、2インチの光電子増倍管H2431-50では、カイ2乗検定による波形分別法の開発に成功していること、更に波形サンプリングレートが5GS/sのV1742を用いれば、より詳細な波形が得られることから、初年度に目標としていた波形分別法の開発は次年度早期に実現できると考えているため。
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今後の研究の推進方策 |
50本の3/8インチ光電子増倍管H3164-12を設置したUNI-ZICOS検出器を作製し、外部からCo-60のβ線とγ線を検出器に入射させる。50本のH3164-12の信号は、2台のV1742へ入力し、全チャンネルの波形観測を行う。β線は厚み300ミクロンのシリコン半導体検出器に入射させ、500keVのエネルギー付与による信号でトリガーを発生させる。UNI-ZICOS内で観測されるβ線と1.3325MeVのγ線のコンプトン散乱事象による電子からのチェレンコフ光を観測し位相幾何学情報である平均角を計測する。また、Co-60の代わりにSr-90を用いることで、β線だけの平均角を計測可能となり、これらの値が明確に異なる事実から、Tl-208のβγ事象を95%除去できることを実証する計画である。
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