研究実績の概要 |
高圧キセノンガス検出器の開発をすすめた. 飛跡検出面に搭載する光検出器(MPPC)をこれまでの168chから672chまで増強し有効面積の拡張をおこなっている. これにより検出器で観測可能なエネルギー帯が少し広がったため, 新たに662keVのガンマ線源である137Csを用いた検出器応答の確認を行った. 結果としてエネルギー分解能は1.28±0.02%(FWHM)であり, これは二重ベータ崩壊のQ値に換算しておおよそ0.67%(FWHM)の分解能に相当する. スペインのNEXT実験と並び, キセノンガス検出器としては最高レベルのエネルギー分解能を実証することができた. また新学術領域"地下宇宙"の計画班と連携し, ゲルマニウム検出器を用いて放射性不純物量の測定を行った. おおよそほとんどの検出器部材の放射能は低いものの, 事象時刻記録のための光検出器(PMT)に含まれる放射線量が400Bq/個をこえており, 今後より低放射能な光検出器の開発が課題であることが明らかになった. 将来的に地下実験として大型化を行うことを考えており, その基本設計を行った. 神岡鉱山地下を仮定した場合には, その坑道直径とトラック架台の高さから, ガス圧力容器の直径が制限される. 一方で容器外側からくる環境放射線を防ぐためのシールドを構築するためには, 少し容器直径を抑えて坑道壁面とガス容器間にシールドを入れるスペースの確保が必要であるが, 希少事象探索であるので標的原子核数を最大化するためにも容器は大きく確保したい. 地下用検出器を制作する際に, ここの最適化を図る必要があることがわかり, そのためにはより詳細な放射線不純物評価・環境放射線の評価と対策が必要であることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
ゲルマニウム検出器での放射線不純物量測定と並行し, ICP-MSを用いた分析も新たに行う. まだ主要パーツを大まかに測定しただけであるので, 残りの細かいパーツをも測定をし, より詳細な背景事象理解につとめる. またこれらの結果をGeant4シミュレーションに組み込むことで, 将来的検出器デザインのための最適化にフィードバックする. また時刻測定側の光検出器(PMT)を追加で増設し, 現行試作機の性能向上を試みる. また二重ベータ崩壊のQ値に近いところでのエネルギー帯での分解能評価試験を継続してすすめる.
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