ニュートリノのマヨラナ性検証のための検出器開発と並行して、その飛跡検出能力を生かしてニュートリノがディラックであった場合に見えるとされる信号探索も可能なように改良を施している。 まずタイミングを測定するための光検出器はこれまでは一部しか導入できていなかったものを、今回本数を増やして導入することができた。これによって検出器内部の限定された体積領域のみしか精度よく時間情報を得られなかったものが、ほぼすべての領域において時間情報を取得することができるようになった。 またエネルギー測定面の光検出器に関しては、測定中に信号線の断線などの問題があったがこれの原因究明および改良が施された。問題は読み出し信号線をFrexiblePrintCable(FPC)にて制作し、基板間コネクタを表面実装してFPC同士を接続していたが、この表面実装部分とFPCカバーレイの間の部分に曲がる力が働いた際に、はんだ付けされた導線が断線するということだった。応急処置としてはPEEK製の補強材を付け加えることで強度を増して実験中の断線を防いだ。また一部フラックスが付着していたことによる接続不良も認められたが、使用前に丁寧な洗浄を心掛けることで解決できた。上記反省を生かして、断線しにくい構造をもったFPCを新たに設計しなおした。上記改良によってこれまでよりも安定的なデータ取得が可能になってきており、放射線源を用いた検出器の性能評価を行った。ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊のQ値である2.5MeV付近への換算値で、ヨーロッパで先行して開発が進められている共同実験とくらべて同等の性能を有することが実証された。さらに飛跡取得にも成功しており、高エネルギー分解能かつ飛跡取得可能なニュートリノ検出器への実現へと着実に進んでいる。
|