研究実績の概要 |
超新星ニュートリノの精密な数値モデルを構築するために、以前の超新星の系統的研究(K. Nakamura, T. Takiwaki, T. Kuroda & K. Kotake (2015) PASJ, 67, 107)で用いたコードを大幅にアップデートした。ニュートン的であった重力に一般相対論的効果(A. Marek, H. Dimmelmeier, H-T. Janka, E. Mueller, R. Buras, (2006) ApJ, 445, 273)を近似的に取り入れた。さらにミュー型およびタウ型ニュートリノにもIDSAと呼ばれる先進的近似法を適用し、電子型と同じレベルでエネルギースペクトルの情報を得られるように改良した。ニュートリノ反応率も最新のもの(K. Kotake, T. Takiwaki, T. Fischer, K. Nakamura, G. Martinez-Pinedo (2018), ApJ, 853, 170)を採用した。SN 1987Aに対応する連星進化親星モデル(T. Urushibata, K. Takahashi, H. Umeda, T. Yoshida (2018) MNRAS 473, L101)を初期条件として空間3次元の計算結果を1次元の結果と比較したところ、ニュートリノ光度と平均エネルギーに差異が見られた。衝撃波の復活によって電子型および反電子型ニュートリノ光度が減少した。一方、原始中性子星内部の対流によってニュートリノ球半径が膨張することにより平均エネルギーは全てのフレーバーで減少した。さらにミュー型およびタウ型ニュートリノの光度は増加することを発見した。これも同様の理由であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
数値コードの改良によって計算コストが当初の見積もりを超えて増大し、それにより計画していたモデル数を消化できなかった。主な原因は最新のニュートリノ反応率(K. Kotake, T. Takiwaki, T. Fischer, K. Nakamura, G. Martinez-Pinedo (2018), ApJ, 853, 170)を採用したことで、その中でも特にニュートリノ間散乱とニュートリノペア反応の反応率の計算量が大きかった。ニュートリノ間散乱はニュートリノ光度等には大きく影響しないが、ペア反応はミュー型およびタウ型ニュートリノの光度に影響する。本研究の主目的である精密な超新星ニュートリノモデルの構築には欠かすことができないため、当初の計画よりモデル数を減らさざるを得なくなった。
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