研究実績の概要 |
複雑な結晶構造をもつ第13族元素(B, Al, Ga, In)化合物をターゲットにして,特定元素周囲の局所構造の精密決定(極局所構造解析)から広範囲にわたる原子集団のゆらぎの特徴抽出まで,連続的にスケールアップした先端的構造解析法を駆使した.電子顕微鏡を駆使した原子分解能元素マッピングをベースとした極局所構造解析法,放射光を利用したX線異常散乱(Anomalous X-ray Scattering : AXS)法とReverse Monte Carlo(RMC)シミュレーションをドッキングしたAXS-RMC法を協働的に併用して,第13族元素化合物に存在する化学的短距離秩序構造(Chemical Short Range Ordering : CSRO)とそれらCSROの連結様式(中距離秩序構造 (Medium Range Ordering: MRO))に新しい構造秩序を見出し,構造ユニットの連結様式の多様性と形成機構を3次元定量的に解明した. 巨大ひずみ加工(冷間加工およびhigh pressure torsion)によって,スクッテルダイト化合物((Sm,Mm)0.15Co4Sb12)の熱電変換特性の大幅な改善に成功した.格子欠陥の導入によって,バルク材では達成できなかったサブミクロンからナノスケールにわたる特異な微細組織を形成し,特に格子熱伝導率の低減を実現させた.熱電変換性能指数 ZT = 2.1 を示すスクッテルダイト材料へのせん断歪みの影響を明らかにした. Cu3Au 型-アンチペロブスカイト型構造を持つScRh3B0.6 化合物に現れる{111}* 方向にシャープな散漫散乱の三次元可視化に成功した.実空間情報(原子配列)とのコンビネーションから,この化合物群におけるMROについての理解が進んだ.
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