これまで発見してきたブロック共重合体のミクロ相分離構造のσ相および準結晶に加え、既報のブロック共重合体に発見された系に倣い、未発見のブロック共重合体の系を新たに合成し、それらの系で準結晶およびその近似結晶の発現があるか調べてきた。具体的にポリスチレン(PS)とポリアクリル酸メチル(PMA)からなるブロック共重合体を原子移動ラジカル重合による精密重合法で合成し、PSの体積分率として50%と18%の2種類のブロック共重合体を準備した。これらをある割合(体積分率50%試料の方を20-30重量%程度の混合比)で混合することによりフィルムを作成した。その試料を少なくとも4日間180℃で真空熱処理することでσ相 (準結晶の近似結晶)およびA15相の形成を確認した。それらをもとに、より短時間(数時間から2日間)の熱処理を施すことで、12回対称準結晶(DDQC)形成を発見することができた。 さらにフィルム試料作成をブロック共重合体の量成分に対して、共通な両溶媒を用いるより、片方成分(PMA成分)に対して選択溶媒を用いることで、溶液中で既に球状ドメインを形成させることで、準結晶およびσ結晶形成までの時間が大幅に小さくなることが明らかとなった。球状ドメインのサイズ分布が準結晶形成の鍵を握ることが言われており、溶液中で高分子鎖のMobilityが高い状態を保つことで構造形成にかかる時間を短縮することができることが分かった。 新規な高分子ブロック共重合体の系としてはポリアクリル酸ブチルとポリメタクリル酸メチルからなるブロック共重合体においても準結晶が形成する兆しを確認でき、これらの特殊な構造が、一般的に形成する構造であることが改めて確認できた。
|