研究領域 | ハイパーマテリアル:補空間が創る新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05270
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
手塚 真樹 京都大学, 理学研究科, 助教 (40591417)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 準周期系 / 光格子 / 超格子ポテンシャル / トポロジカル輸送 / 非エルミート・ハミルトニアン / 多体局在 |
研究実績の概要 |
2次元の正方格子から準周期系を得る方法として、傾きが無理数の直線を加え、一定距離内にある格子点をこの直線に射影する切断射影法が良く知られている。冷却フェルミ原子気体系を念頭に、2次元光格子型の閉じ込めと、その座標軸に対して傾いた直線状の閉じ込め(超格子ポテンシャル)を重ね合わせた系を考えた。超格子ポテンシャルを一定の速さで動かしたときに駆動される粒子数は、傾きが有理数の場合、その分子・分母を係数とするディオファントス方程式の解に対応したトポロジカル数で量子化されることがわかった。1次元のサウレス量子ポンピングと2次元の整数量子ホール効果の対応のように、これは、3次元系で提案されている量子ホール効果に対応する、2次元に拡張されたサウレス量子ポンピングとなっている。本成果は日本物理学会英文誌の Editors' Choice に選ばれ、和文誌に紹介が掲載された。 また、2個の原子が光会合して分子を形成し、閉じ込めから失われることによるロスをハミルトニアンの非エルミート項として考慮した、光格子中のフェルミ原子のダイナミクスについても研究協力者らと研究を行った。 このほか、本研究課題に関連し、多体量子系のフォック空間を高次元空間として捉え、そこでの局在現象である多体局在を定量的に調べた論文および、同論文でも調べたサチデフ-イェ-キタエフ模型を変形した模型に関してエネルギー準位統計を調べダイナミクスがカオス的となる条件を調べた論文が出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非エルミート項で記述される多体量子系について複数のテーマで研究を進め、1件については研究協力者が研究会での口頭発表を行ったが、論文発表に至っていない。その一方で、「研究実績の概要」に記載したとおり、本研究課題および新学術領域に関連し、複数の論文を出版することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本課題である非エルミート性を考慮したハイパーマテリアル(準周期系・準結晶系)の研究に関し、新学術領域内外の実験研究・関連する理論研究の状況に照らし、より優先すべき状況に集中して取り組むとともに、既に得られている結果の取りまとめ・論文投稿を早期に行う。
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