研究実績の概要 |
近年、準結晶・近似結晶における物質開発は希土類元素を含んだ系でもYb系準結晶における超伝導の発見、Tb系準結晶での強磁性など大きな発展があり、注目を集めている。この中でCeを含んだ準結晶の数は少ないなか、Ce-Au-Ga系で近似結晶が合成され、組成比の違い(ここでは仮にa, bとする)によってCe 4f電子に起因すると考えるのが適切なWeiss温度が変化し、aにおいては一定程度の遍歴性の可能性が指摘されていた。これをうけ本研究ではCe-Au-Ga系近似結晶に対してバルク敏感な硬X線光電子分光を行い、Ce 3d内殻光電子スペクトルから4f電子状態を研究した。組成a, bで内殻光電子スペクトルに差異は見られないばかりか、両者とも4f電子状態が極めて局在的という結果を得た。これは、結晶で重い電子系または強相関電子系かつ4f電子構造が局在的で低温で磁性秩序を有するCeRu2Ge2と比較しても混成が弱く局在的といえる。我々の結果はこの近似結晶中4f電子における極めて高い局在性を示し、いわゆるRKKY相互作用も非常に弱く、a, bにおけるWeiss温度の違いは重い電子系における量子臨界点よりもかけ離れて弱いところでの変化と考えられる。 さらに我々は組成a, bにおける電子状態変化を探索すべく励起エネルギーが8.4 eVと低い極低エネルギー光電子分光を分解能10 meVの高分解能で測定した。準結晶においてはこれまで光電子分光でフェルミ準位ごく近傍におけるスペクトル強度の抑制(これを「擬ギャップ」とも呼んでいる、但しフェルミ端そのものは明確に見えることも多い)が報告されているがCe-Au-Ga系においてもわずか(直線的な外挿から10-20%程度の減少)であるが擬ギャップ的な状態が観測された。またそのエネルギースケールはa, bで異なり、両者間の電子状態変化を観測することに成功した。
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