研究実績の概要 |
高温超伝導の起源として注目される量子スピン液体が実現する可能性の高い、フラストレートした量子スピン系に対して、大規模数値対角化を適用して研究してきた。従来から多くの研究がされている三角形を基本とする格子ではなく、まだ未開拓の五角形を基本とする格子系に焦点を当て、新奇な量子現象の理論的探索を進めてきた。その成果を以下に記す。 (1)フローレットペンタゴン格子反強磁性体の磁化過程 タイリングの問題で注目されているフローレットペンタゴン格子と呼ばれる格子におけるスピン1/2反強磁性体の磁化過程について、有限クラスターの大規模数値対角化を適用して、磁化曲線とそのスピン状態を解析した。すべての反強磁性相互作用の強さを等しくした場合には、飽和磁化の1/9, 1/3, 7/9に相当する磁化に磁化プラトーが現れることが判明した。3つの非等価なサイトの平均磁化を計算することにより、これらの磁化プラトーのメカニズムを理論的に解明した。また、2種類の強さの違う反強磁性交換相互作用を導入した場合には、この相互作用の比を変えると、5/9磁化プラトーも出現することが判明した。さらに、磁化プラトーとは隣接しない磁化ジャンプが起きることも判明した。一方、研究課題に掲げた5回対称非周期系(準結晶、ハイパーマテリアル)の磁化過程の研究にも着手したが、まだ有意な成果は得られていない。 (2)直行ダイマー系の量子相転移 Shastry-Sutherland模型と呼ばれるフラストレーション系は、2種類の反強磁性交換相互作用の強さの比によっては、直行ダイマー状態が厳密な基底状態になることと、この比を変えると新しいプラケット・シングレット状態が基底状態になる量子相転移が起きることで注目されている。この系に大規模数値対角化を適用することにより、さらに新しい量子相転移が起きることを示した。
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