研究領域 | 蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05282
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 勇太 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (60774081)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 応力 / Li化学ポテンシャル |
研究実績の概要 |
本研究では、応力・歪みなどの力学因子が、界面イオンダイナミクスの基礎特性に与える影響を定量的に評価する手法を開発し、両者の関係を明らかにすることを目的としている。2020年度は、(1)そのための評価手法の開発、および(2)これまで我々が開発してきた手法を用いて、Liイオン電池用二相共存電極材料に応力を印加した際のLi化学ポテンシャル変化の評価を行った。(1)の研究では、Liイオン電池電極材料(LiCoO2)のエピタキシャル薄膜の成膜に成功するとともに、同薄膜に対し、異なる方向に応力を印加した際に、異なるLi化学ポテンシャル変化が生じることを示唆する結果を得た。この結果はLiCoO2の化学膨張係数に異方性があることを反映していると考えられる。今後は、現在開発中の測定手法をさらに改良し、応力を印加していない時の測定値の変動(バックグラウンドの変化)を軽減することで、応力印加時のLi化学ポテンシャル変化を精密に定量評価することを目指す。(2)の研究では、Liイオン電池用二相共存電極材料に応力を印加すると、瞬時に材料のLi化学ポテンシャルが変化し、その後応力を保持している間、緩やかにLi化学ポテンシャルが変化することを示唆する結果を得た。このLi化学ポテンシャルの緩やかな変化は、応力印加による2相のLi組成の変化、および体積分率の変化に伴う応力緩和に起因すると考えられる。本結果については、国内学会で発表するとともに、査読付き論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定したとおり、Liイオン電池電極材料(LiCoO2)のエピタキシャル薄膜の成膜に成功したのとともに、同薄膜に対し応力を印加した際のLi化学ポテンシャル変化を観測することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
現在開発中の手法では、Liイオン電池電極材料(LiCoO2)のエピタキシャル薄膜に対し応力を印加した際のLi化学ポテンシャル変化を観測することができているが、応力を印加していない時の測定値の変動(バックグラウンド)が大きく、Li化学ポテンシャルの変化を定量評価するには至っていない。バックグラウンドが大きい原因は、薄膜と集電体との接触不良、参照電極の電位の不安定さが原因と考えられるため、薄膜と集電体との接触性の向上、およびLi箔電極などの電位が安定した参照電極の使用などにより、課題を解決する予定である。
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