第一原理計算、機械学習、統計熱力学計算を連携させる独自の第一原理ベース統計熱力学計算手法を開発し、Pt/イットリア安定化ジルコニア界面に適用し、スーパーコンピュータ「富岳」をフル活用することで、有限温度での界面イオン分布の第一原理予測に初めて成功した。酸素空孔濃度を変化させて計算を行うことで、酸素ポテンシャルによる空間電荷層の変調を予測した。その結果、酸化雰囲気で焼結を行うと、界面にYドーパントの偏析が生じ、還元雰囲気では酸素空孔の偏析が起こることが分かった。これは、プロセス条件によって界面のショットキー障壁やバンドアラインメントを調整することができることを示唆している。また、そのようなイオンの偏析は界面から1 nm程度の非常に短い領域で生じることが分かった。したがって、実験でしばしばみられるマイクロメートルスケールの組成変調は、いわゆる空間電荷層効果というよりは、もう少しマクロスコピックな酸化還元反応による相変態として理解するのが適当であると考えられる。
また、領域内連携の一環として、標準単結晶試料として共有されているLa_xLi_yNbO3の第一原理計算を行い、Liイオンの分布や拡散障壁を調べた。この物質はc軸方向にLa-rich層とLa-poor相が交互に存在することが知られているが、LiもLa-rich層に遍在することが分かった。さらに、ab面内の拡散に比べて、c軸方向の拡散のエネルギー障壁が高くなることを明らかにした。得られた活性化エネルギーは脱分極測定で得られているいくつかの分極過程のエネルギーとも整合するものとなっている。
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