研究領域 | 蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05285
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 康司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00838378)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 全固体リチウム電池 / 第一原理計算 / 機械学習ポテンシャル / 電極/固体電解質界面 / リチウムイオン伝導 |
研究実績の概要 |
本研究では、全固体リチウム電池(LIB)開発の課題の一つである電極/固体電解質の界面抵抗の起源を原子スケールから明らかにすることを目的とし、そのための機械学習ポテンシャルの開発に取り組んだ。 令和2年度は、電極と固体電解質として金(Au)とリン酸リチウム(Li3PO4)を用いた界面系についてのニューラルネットワークポテンシャル(NNP)の改良に取り組み、エネルギーと原子にかかる力の予測精度の向上に成功した。そこで、計算コストの観点から第一原理計算での取り扱いが難しい比較的大規模な界面モデルを用いて、作成したNNPによりLi3PO4中でのリチウム欠陥の振る舞いを解析した。具体的には、リチウム欠陥の界面からの距離依存性および界面近傍での欠陥密度依存性を評価した。その結果、Au/Li3PO4界面近傍に堆積しやすい欠陥種は格子間リチウムイオンであり、バルクモデルを用いた第一原理計算での結果と一致するものとなった。今後、欠陥密度依存性等の定量的な値について第一原理計算による検証を進める予定である。 また、LIBの代表的な電極材料であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)のNNP作成を進めた。ここでは、リチウムイオンの粒界伝導を考慮しており、作成したNNPの反位相境界でのイオン伝導の予測結果は第一原理計算と定性的に一致するものとなった。さらに、結晶化ガラス材料の解析に向けたNNP作成に着手し、今後精度向上および解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属/絶縁体界面系への機械学習ポテンシャルの適用可能性を示すことができ、固体電解質中における欠陥挙動について、第一原理計算では計算コストの観点から取り扱いが難しい比較的大きなモデルでの解析を進めることに成功した。また、外部電場中のイオン挙動についても、ニューラルネットワークを用いた電荷を予測する方法論の開発が順調に進行し、今後低い計算コストでのシミュレーションが可能となった。さらに、全固体リチウム電池の代表的な電極材料であるコバルト酸リチウムの機械学習ポテンシャルにおいても、第一原理計算結果を定性的に再現することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
まず初年度に実施した、電極/固体電解質界面近傍での欠陥密度依存性についての解析を進め、機械学習ポテンシャルを用いて得られた結果の妥当性の検証を行う。 次に、コバルト酸リチウムの機械学習ポテンシャルの粒界伝導の予測精度の向上に取り組み、その後界面系へと拡張し粒界や界面を含むモデルでリチウムイオンの伝導挙動を原子スケールで調査する。 さらに、計画班との共同研究を発展させるために、結晶化ガラス材料の解析に向けた機械学習ポテンシャルの作成および解析を進める。
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