本研究では、全固体リチウム(イオン)電池(LIBs)開発の課題の一つである電極と固体電解質の界面における抵抗の起源を原子スケールから明らかにすることを目的とし、機械学習手法を用いた原子間ポテンシャル(機械学習ポテンシャル)を作成し、界面近傍でのリチウム欠陥挙動を解析した。昨年度に作成した機械学習ポテンシャルを用いて、引き続き金(Au)とリン酸リチウム(Li3PO4)の界面モデルでのリチウム欠陥挙動を調査した。界面近傍に存在するリチウム欠陥の密度と欠陥生成エネルギーの関係を調べたところ、格子間リチウム欠陥は界面直上に存在しやすいことがわかった。また、得られた結果を第一原理計算で検証し、機械学習ポテンシャルの予測精度と界面系に適用する際の問題点がわかった。 LIBs開発における他の重要な課題として固体電解質のリチウムイオン伝導率の向上がある。本研究領域では硫化物系の固体電解質材料を用いた研究が精力的に進められている。その中で、アモルファス材料の一部を結晶化することでリチウムイオン伝導率が向上することが知られている。そこで、上述の結晶化ガラス材料のリチウムイオン伝導機構を原子スケールから明らかにするために、機械学習ポテンシャルの方法をLi3PS4材料に適用した。密度汎関数理論(DFT)に基づく第一原理計算データから機械学習ポテンシャルを作成し、作成したポテンシャルを用いた分子動力学(MD)計算からアモルファス構造を得た。さらに、得られたアモルファス構造に対してMD計算を行い、結晶化が起こる条件の検証を進めた。
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