本研究では、SiC基板上大面積高品質単一方位グラフェンを、固体電解質との界面における電気化学反応研究のモデル試料として用いることで、その詳細を明らかにすることを目標としている。具体的には、固体電解質としてはリン酸リチウムオキシナイトライドガラス(LiPON)を用い、グラフェン層間およびグラフェン/基板界面へのLiイオンの挿入と拡散についてのメカニズムを明らかにすることを目指した。 今年度は、昨年度の実験結果により示唆された単層グラフェンでのLi挿入脱離機構について、より詳細を明らかにするために、グラフェン層数が2層程度の試料についても同様に実験を行った。その結果、層数が増加しても酸化ピークが2本観察されることがわかった。層数増加に伴うその変化は、低電位側のピークの高電流値化と高電位側へのシフトであった。この結果は、低電位側がグラフェン層間、高電位側がグラフェン/基板界面でのLi挿入脱離であるとする考えを補強するものである。また、多層グラファイトにおけるステージ構造変化との対応に関しては、複数の酸化ピークの電流値とピーク位置が、ステージ構造変化に対応する酸化ピークへと系統的に変化していることもわかった。電気化学インピーダンス測定、充放電測定からは、層数増加に伴って、Li挿入サイトが増加したことを示唆する結果が得られた。これらの成果について、新学術領域会議に加えて、2022年3月の応用物理学会において発表した。また、多層グラファイトにおける結果は2021年10月に出版され、1~2層グラフェンの結果については新学術領域代表である入山・本山グループと共同研究論文を投稿中である。
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