研究領域 | 蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05293
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
間嶋 拓也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50515038)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | TOF-ERDA / ERDA / イオンビーム分析 / リチウムイオン電池 / 全固体電池 |
研究実績の概要 |
全固体リチウムイオン電池などの蓄電固体の界面における,特異なイオン輸送特性やイオン蓄積挙動のメカニズムを理解する上で,界面近傍のイオン濃度分布は最も基本的な情報のひとつである.その一つとしてこれまで,MeVイオンビームによる弾性反跳粒子検出(ERDA)法を用いたイオン濃度分布の直接測定が実現されてきた.しかし,この手法では深さ分解能が十分ではなく,また元素分離ができないという制約があった.そこで本研究では,飛行時間測定型(TOF-)ERDA 法 を用いた新たな測定システムを構築して,元素分離された高分解のイオン濃度分布の測定を実現することを目的としている. 本年度は,(1) 新たな測定システム全体の設計から開始し,(2) 加速器専用ビームラインの構築,(3) 通常のストッパーフォイル法のERDA測定とRBS測定の同時計測が可能な計測システムの構築,(4)それらを用いた試験測定までを完了した.また並行して,(5) 従来から用いているストッパーフォイル法のERDA測定システムを用いた,試料の最適条件の探索を進めた. TOF部のサイズは,本電池試料の測定に最適な深さ分解能と検出効率の条件を考慮して設計した.またTOF部と反対側には,通常のERDA測定を行うための半導体検出器を設置した.また同時にRBS測定も可能な装置とした.試料導入システムは,充放電のための電圧印加ができるようにし,特に電池試料の測定に適した設計にした.装置は,申請者の所属部局で所有する1.7MVタンデム型静電加速器の旧分析用ビームラインを改修し,専用ビームラインとして構築した.3回のマシンタイムを実施して,過去に行っていた通常のERDA測定の結果を再現できることを確認した.またA01班との共同研究により,ERDA測定に最適な電池試料のサイズや集電体構造を決定し,従来装置を用いた測定でも新たな測定結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究概要の項目で記載した通り,当初に計画していた項目は全て完了している.また,電圧印加システムの構築は次年度に予定していたが,既に試料導入システムに実装できており,実際に充放電を行なって濃度分布変化を計測できることまで確認できいる.したがって,当初の計画よりはやや進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度はまずTOF部の構築を行う.TOF測定に必要な2台の透過型検出器は昨年度に設計および部品製作は概ね完了しており,その組み上げと真空槽への設置を行う.次に,TOF測定システムの試験と測定条件の最適化を行うため,Am241密封線源から放出されるアルファ粒子を用いた試験を行う.印加電圧の決定や検出効率の見積もり,解析ソフトウェアを含めた分析システムの構築などを進める.その後,新学術領域研究内のA01, A02班などと密接に連携しながら,提供された各種の薄膜リチウムイオン電池試料の測定を行う.特に,TOF法の導入による深さ分解能の向上に注目しながら,昨年度の試験測定で確認した条件にもとづき測定を進める.特に電解質界面近傍に着目して,充放電に伴うリチウム分布の変化や,試料抵抗に依存した構成元素の深さ分布の違いなどを調べる.さらには,大気非暴露での試料装填が可能なシステムを構築し,成膜時から大気に一切暴露していない試料のERDA測定の実現を目指す.
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