研究領域 | 蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05298
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
畠山 歓 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (90822461)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 全固体二次電池 / リチウムイオン電池 / 固体電解質 |
研究実績の概要 |
本研究では、分極性のガラス状高分子とリチウム塩との界面で進行する、新しいタイプのイオンダイナミクスの学理を明らかにすることを目的としている。当初の計画に従い、(1)高分子の界面での高速イオンダイナミクスの解明と(2)高イオン伝導を示す高分子構造の探索に重点を置いて研究を推進した。 (1) 高分子の界面での輸送ダイナミクスの解明: 一連の検討より、リチウム塩に電子ドナー・アクセプタ、又はその双方を複合した組成物が室温でイオン伝導することを、電気化学測定並びにNMR分析より部分的に明らかにした。伝導度の温度依存性の評価を通し、一連の伝導体が、高分子系に特有のWilliams-Landel-Ferry型ではなく、むしろArrhenius式に近い形で応答することも見いだした。モデル実験を通し、電解質・ドーパント界面でのイオン輸送がバルクの伝導状態を支配しているとの描像も得つつある。 (2)高イオン伝導を示す高分子構造の探索: 室温でより高いイオン伝導度を示す電解質構造の探索にも取り組んだ。ドナー・アクセプタ分子として、従来の高分子系材料から更に幅を拡げ、ベンゾキノンやヒドロキノンなどの低分子系化合物を新規に検討した。高分子と同等レベルの伝導度を示し、分子鎖の存在は必ずしも本ダイナミクス系でのイオン伝導に特有の要素ではなく、むしろ本系が、より普遍性の高い輸送現象であることを新たに見いだした。 上記の研究で明らかにした、ガラス状高分子イオン伝導体のダイナミクス解明や分子構造の探索に関する成果は、査読付き学術誌や国際学会などで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Covid19の蔓延により実験遂行が困難な時期があったが、概ね、当初の計画で期待する成果が得られた。また、一部では予想を超える知見(例: 低分子系でのイオン伝導)も得られ、全体としては順調に研究が遂行されていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた成果をもとに、本系におけるダイナミクス現象のより詳細な解明を試みる。例えば、イオン種の拡散係数を推定するためのパルス磁場勾配NMRや放射性元素を組み込んだ電解質の放射性トレーサ測定により、その拡散係数や輸率を評価する。また、分子レベルでの界面状態の解析のため、固体NMRでの詳細な解析も試みる。今年度に引き続き、リチウム塩・ドナー・アクセプタ分子の種類を変えた電解質を各種作製し、その構造―特性相関からイオン伝導に必要な因子を整理する。
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