• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実績報告書

高速表面X線回折による薄膜全固体電池正極活物質界面のオペランド観察

公募研究

研究領域蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学
研究課題/領域番号 20H05302
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

白澤 徹郎  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (80451889)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード全固体電池 / オペランド観察 / 表面X線回折 / 放射光
研究実績の概要

全固体電池の材料開発は材料内部の特性の改善を指針に進められてきたが、電極-電解質界面での構造変化が充放電速度や安定性などの電池特性を左右することも事実であり、明確な界面構造の設計指針とこれに資する界面イオン輸送過程の学理構築が求められている。この要望に応えるために、結晶方位と界面接合面積が規定されたエピタキシャル正極薄膜電極を構成要素とする薄膜全固体電池を用い、高速表面X線回折法により電解質/正極界面構造を原子スケールで時分割解析することで、界面構造変化と電池特性の相関を明らかにすることを目的としている。
当該年度は、オペランド観察用セルの製作および、層状岩塩酸化物である(001)配向Li(Ni0.8Co0.2)O2正極のエピタキシャル薄膜の合成と薄膜電池の作製に成功し、膜厚50 nmのLi(Ni0.8Co0.2)O2正極薄膜とLi3PO4固体電解質膜の界面について、充放電中における構造変化を高速表面X線回折法を用いてオペランド観察を行った。この結果、Li脱挿入による正極の構造変化の観察に成功した。構造解析を行った結果、正極からのLi脱離量が約70%以下の場合には可逆的な構造変化が観察され、正極薄膜の上部でのみLi脱離量が行われ、下部領域ではLi脱挿入による構造変化が生じていないことが明らかになった。他方、Li脱離量が約70%を超える場合には、正極の結晶構造が菱面体晶相と単射晶相に2相分離し、不可逆的な構造変化であることが分かった。
他方、アナターゼ型TiO2正極と電解質の界面に挿入したAl2O3ナノ層について、Li挿入により非晶質であったAl2O3ナノ層が結晶配向化することを発見した。今後、オペランド観察により非晶-結晶化転移のダイナミクスと電池特性の相関解明を目指す予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画通り、オペランド観察用セルの製作、(001)配向Li(Ni0.8Co0.2)O2正極のエピタキシャル薄膜の合成と薄膜電池の作製、および充放電中のオペランド観察に成功した。他方、アナターゼ型TiO2正極と電解質の界面に挿入したAl2O3ナノ層について、Li挿入により非晶質であったAl2O3ナノ層が結晶配向化することを発見したことは、当初の計画にはなく、予定以上の進展であると自己評価した。

今後の研究の推進方策

昨年度に引き続いて、(001)配向Li(Ni0.8Co0.2)O2正極薄膜の高速表面X線回折によるオペランド観察を行い、電位依存性、サイクル劣化に関する不可逆的な構造変化をより詳細に調べ、リチウムイオン脱挿入過程を明らかにする。また、オペランド観察に適した(104)配向Li(Ni0.8Co0.2)O2正極薄膜の作製を進め、(001)配向正極と比較することで、リチウムイオンの結晶粒界拡散と結晶格子内拡散の特性を明らかにすることを目指す。他方、正極と電解質の界面に挿入したAl2O3ナノ層の充放電に伴う構造変化をオペランド観察する。昨年度の研究により、Li挿入により非晶質であったAl2O3ナノ層が結晶配向化することを発見しており、今年度は、オペランド観察により、非晶-結晶化転移のダイナミクスと電池特性の相関解明を目指す。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 放射光X線散乱によるエネルギー材料界面のオペランド観察2021

    • 著者名/発表者名
      白澤徹郎
    • 学会等名
      日本表面真空学会九州支部 表面・界面構造セミナー
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi