公募研究
葉緑体は、さまざまな発生プロセスや栄養飢餓下では積極的に分解され、個体の成長や生存に重要な栄養源を提供する。葉緑体は、その一部分が本体から切り離され、小胞RCBとして、コアATG因子に依存したマクロオートファジーにより液胞に輸送・分解される。本課題ではRCB経路に関わる基本問題のうち、「他の細胞質基質との区別」や「葉緑体本体からのストロマ成分の選択的な切り離し」に関わるメカニズムについて明らかにする。さらにRCBと他の類似経路の関係を調べ、「ピースミールクロロファジーの多様性」について明らかにする。今年度は特に以下の課題を中心に進めた。1. RCB経路に選択性を賦与するメカニズムの解析: RCBを細胞質に異常蓄積するシロイヌナズナ変異体gfs9-5の特徴付けを進めた結果、本変異体ではオートファジーフラックスが野生型に比べて大きく亢進していることが分かった(Ishida et al. 投稿中)。RCBに関わるレセプター候補の共免疫沈降解析による同定を行うため、このgfs9-5にFLAG-AtATG8a(野生型)と、AIM binding siteに変異を持つ変異型を発現させる形質転換体を作出し、有用ラインの選抜を進めた。2. 葉緑体本体からのRCB切り離しのメカニズムの解析: RCB形成における葉緑体の増殖分裂に関わる既知因子の役割について、分裂装置の主要な構成因子のノックアウト変異がRCB経路に及ぼす影響について調べた。このうち、葉緑体分裂が特に異常となるarc3, arc5, およびarc6についてはいずれもRCB形成に必須の因子ではなかった。また、このような逆遺伝学的解析ではカバーできない、未知のRCB形成に関わる因子を同定するため、gfs9-5変異体に変異原処理を行い、サプレッサー変異体をスクリーニングする系を立ち上げた。3. 領域内共同研究: オートファジーによる障害を受けた葉緑体や植物ミトコンドリアの選択的除去の研究推進に貢献した(Kikuchi et al. 2020, Nakamura et al. 2021)。
2: おおむね順調に進展している
gfs9-5の同定に関するキーとなるデータを取得し、論文投稿までもっていくことができた。またgfs9-5を材料とするRCB形成に関わる新奇変異体のスクリーニング系を立ち上げることができた。
RCBに関わるレセプター候補の共免疫沈降解析や、新奇変異体の同定を計画通りに進める。さらにピースミールクロロファジー経路の多様性:特にRCBとATI-PS bodyの関係性についての解析についても並行して進めていく。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Plant and Cell Physiology
巻: - ページ: -
10.1093/pcp/pcaa162
Plant Physiology
巻: 183 ページ: 1531-1544
10.1104/pp.20.00237