RNAは多様な化学修飾を含んでおり、転写後の遺伝子発現に不可欠である。一方、ほとんどのRNA修飾は脱修飾をされないため、RNAが1塩基まで代謝された後でも存在する。しかし、修飾を含むRNA塩基、すなわち修飾ヌクレオシドがどのような経路で細胞外に放出され、細胞外においてどのような作用を有するかが不明である。そこで本研究ではRNA分解後に生じる修飾ヌクレオシドの分泌機構ならびに細胞外における修飾ヌクレオシドの作用の解明を目的とした。 修飾ヌクレオシドの分泌機構について古典的な未修飾ヌクレオシドのトランスポーターであるENTファミリーに着目し、ENT1/2のノックアウト細胞を作成し細胞内外における修飾ヌクレオシドの動態を検討した結果、ENT1/2のノックアウト細胞内において修飾ヌクレオシドの顕著な蓄積が認められた。また、修飾ヌクレオシドが過剰に蓄積しているENT1/2欠損細胞では栄養条件に関わらずオートファジー応答が顕著に上昇し、野生型細胞ににおいて修飾ヌクレオシドの投与がオートファジーの強い応答を見られた。以上のことから、ENT1/2が修飾ヌクレオシドのトランスポーターであること、そして修飾ヌクレオシドがオートファジーを誘導しうることが示された。 一方、細胞外における修飾ヌクレオシドの作用を明らかにするため、修飾ヌクレオシドによるGPCRの活性化を網羅的に検討した。その結果、修飾ヌクレオシドの一種であるm6Aがアデノシン受容体の一種であるA3受容体を強力に活性化できることを発見した。m6AによるA3受容体の活性化は肥満細胞の脱顆粒を促進し、生体においてアレルギー応答ならびにサイトカインの発現更新を誘導した。これらの結果から、細胞外に分泌された修飾ヌクレオシドの一部は、液性因子として細胞機能を制御しうることが示された。
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