オートファジーは細胞内の自己構成成分を分解するシステムである。申請者はこれまでオートファジーに必須と考えられてきたAtg5 やAtg7 に依存しない、新規 のマクロオートファジーを発見し、オルタナティブ・マクロオートファジー(以下、新規オートファジー)と命名した(nature 2009)。従来のAtg5 依存的オート ファジーと、新規のオートファジーは、膜の由来が異なっているほか、分解する基質も異なっており、生体での役割が異なる。しかしながら、Atg5 依存的オート ファジーと、どのように生体内において使い分けられているかは未だ不明であった。そこで本研究では、[1]新規オートファジー実行機構の全容解明、[2]新規 オートファジーの生理機能の解明、[3]Atg5 依存的オートファジーと新規オートファジーの使い分けの実態解明を行い、生体におけるマクロオートファジーの全貌を明らかにすること、を目的に研究を推進した。 今回、オルタナティブ・オートファジーの実行分子として、新たにWipi3の同定に成功した。そして細胞生物学的解析から(1) DNA障害や分泌阻害により、細胞質 中に散在していたWipi3は脱リン酸化されてゴルジ体に局在化すること、(2)ゴルジ体に局在した Wipi3によりゴルジ体膜が湾曲化し隔離膜となること、を見出し た。さらに、Wipi3神経特異的欠損マウスの解析から、(3) この機構が神経細胞の恒常性維持に関わっていること、(4) Atg7 欠損マウスと異なる分解基質を持 ち、それぞれの欠損マウスの表現型が異なること、(5) Wipi3 が小脳のプルキンエ細胞における鉄の蓄積を防いでいること、を見出した。以上の結果より、新規 オートファジーが神経細胞において従来型のオートファジーとは機能分担していることを発表した。
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