研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
20H05323
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和田 洋 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50212329)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | V-ATPase / microautophagy / endosome / lysosome / vacuole |
研究実績の概要 |
真核細胞は膜オルガネラを発達させ、生命を担う物理化学反応の区画化(コンパートメンテーション)を行う。オルガネラ同士は物質と情報を交換し合うダイナミックなシステムを形成する。吸収上皮細胞のオルガネラ間輸送では、リソソームがエンドソームを「飲み込む」、ミクロオートファジーとして知られる膜ダイナミクスによって物質輸送がおこなわれることを見出している。 これまでに、遺伝子改変マウスを用いてRab7の機能喪失により小腸上皮細胞でのオルガネラ形成が異常となり、ミクロオートファジーの不全が起きること、初期胚上皮細胞でのミクロオートファジー欠損は、胚形成モルフォジェンの時空間的な配置が異常となること、をあきらかにした。ミクロオートファジーを起こすメカニズムがどのようなものであるのかを明らかにするため、膜融合HOPS複合体のmVam2サブユニットを欠損するマウスを作成したところ、初期発生の段階で胎生致死となり、その際、初期胚上皮細胞のオルガネラ構造が大きく変化している。Rab7欠失と同様に発生シグナル分子の活性化パターンが異常となるが、このときに影響を受けるのはBMP-Smad1/5のシグナル伝達系であり、Rab7がWnt-beta-catenin経路を特異的に影響するのとは対照的であった。また、膜融合装置CORVETのサブユニットmVam8の欠損ではオルガネラの異常と共にmTORC1カスケードの顕著な低下が見られ、その結果胚体外外胚葉の組織が維持できなくなることを見いだしている。これらの結果、ミクロオートファジーによるシグナル伝達の制御には多面性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
mVam2, mVam8, Rab7のオルガネラ関連遺伝子の条件的機能喪失変異を有するマウスを作出することによって、初期胚、さらには小腸上皮でのミクロオートファジーの生理的意義を明らかにすることができてる。他方、V-ATPase変異では条件的機能喪失の実験系ができておらず、初期胚はともかく、小腸での機能を遺伝学的に示すことができない。しかしV-ATPaseには高い特異性で機能阻害する低分子化合物があるので小腸のex plantを用いることにより薬理学的な研究を進めることが可能であり、今後の課題としている。
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今後の研究の推進方策 |
小腸ex plantを用いて、V-ATPase阻害剤の効果をみる。 メカニズムの一端を知るため、ミクロオートファジーを行う飲乳期の小腸上皮細胞と、ミクロオートファジー活性の見られない成体の小腸上皮細胞での遺伝子発現パターンをtranscriptome解析をすることにより明らかにする。
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