ユビキチンのN末端を介した特殊な連結様式により形成される「直鎖状ユビキチン鎖」は、NF-kBなどの炎症シグナルや細胞死を制御するユニークかつ希少なユビキチン鎖として、大きな注目を集めている。これまでの研究から、細胞内で直鎖状ユビキチン鎖を生成する唯一のE3複合体としてHOIL-1L、HOIP、SHARPINからなるLUBAC(linear ubiquitin chain assembly complex)が同定され、様々な疾患と関連することが報告されている。また近年では、Xenophagyなどの選択的オートファジー系にも寄与することが示されている。 本年度は、申請者が独自に見出した直鎖状ユビキチン鎖の代謝異常に伴い亢進する新規タンパク質分解機構に関して、前年度に引き続き化合物ライブラリーやsiRNAを用いて責任因子の探索を進めた。しかしながら、タンパク質分解を顕著に亢進/抑制させる因子を同定することはできなかった。 また、独自のLUBAC活性阻害剤(HOIPINs)を利用して、直鎖状ユビキチン鎖と神経変性疾患因子のプロテオスタシスとの関連性について解析を進め、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子として知られるTDP43が、細胞質局在化に伴いLUBACと結合し直鎖状ユビキチン化されること、また、この直鎖状ユビキチン化がK48型ユビキチン鎖と協調してTDP43の凝集体形成を亢進させる可能性を見出した。
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