公募研究
タンパク質分解系の一つであるオートファジーは、生体の恒常性維持に必須な細胞応答であり、その異常は神経変性疾患やがんなどさまざまな疾患と関わっている。リソソーム酵素がオートファジーによる分解に重要であることは自明であるが、近年マクロオートファジー(MA)においては、リソソーム細胞内分布もその活性を制御しているとの報告がなされている。リソソーム分布制御の重要な分子は徐々に明らかになりつつあるが、これらのシグナルの上流因子やクロストーク、それらを制御する化合物等は報告されておらず、リソソームの細胞内分布がMAだけでなく、シャペロン介在性オートファジー(CMA)、ミクロオートファジー(mA)の活性に関わるか否かも不明である。そこで、本研究ではリソソーム分布を変化させる化合物の取得を行い、その作用機序を解析し分子機構を同定すること、リソソーム分布がマルチモードオートファジーの制御に関与するか解明することを目的とする。令和2年度はリソソーム分布を制御する化合物を用いた質量分析を用いた解析によりJIP4リン酸化がリソソーム分布制御に必要であることを見出した。その結合タンパク質をSWATH-MSにて網羅的に探索しタンパク質Xを見出した。さらにJIP4ノックアウト細胞を用いた解析により、リソソーム分布変化はマクロオートファジーによるタンパク質分解に関わることを見出した。今後はリソソーム分布がシャペロン介在性オートファジーに影響するか否か、その分解基質であるalpha synucleinの野生型およびシャペロン介在性オートファジー耐性変異体を用いて検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
マクロオートファジーに対するリソソーム分布の重要性は評価できたが、その他のオートファジーに関する検討は次年度の課題である。一方、SWATH-MSを用いた解析でリソソーム分布に関わる新規分子の同定に成功した。以上の進捗を総合的に考えおおむね順調に進展していると考えている。
リソソーム分布変化を制御する化合物をさらに同定し、リソソーム分布と様々なオートファジーとの関連を明らかにする予定である。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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