研究実績の概要 |
リソソームの機能がマクロオートファジーによる分解に重要であることは自明であるが、近年、リソソームの細胞内分布もマクロオートファジーの活性を制御しているとの報告がある。栄養飢餓等の刺激によりリソソームが核周辺に集まることで①mTORC1抑制を介したオートファゴソーム形成促進、②リソソームとオートファゴソームの会合機会の増加によるオートリソソーム形成が促進され、マクロオートファジーが促進されるのである。(Nat Cell Biol. 13:453-60, 2011) 本報告以来、リソソーム分布制御機構解析が進み、逆行輸送に関わる機構としては主に3経路が報告されているが、これらのシステムの上流因子、クロストーク、それらを制御する化合物等は報告されていない。また、新規経路存在の可能性も十分に残されている。さらに、これらの経路の違いがオートファジーを解した基質分解にどのように関与するか明らかにされていない。 本研究では、リソソーム分布を変化させる条件における作用機序解明を行うことで、リソソーム分布制御機構のクロストークや新規経路の解明を目指した。その結果、酸化ストレスを誘導する条件と飢餓条件では異なる経路でリソソーム分布変化が誘導されることを見出した。さらに、タンパク質Xのリン酸化状態がその経路のスイッチとして働くことを見出した。また、リソソーム分布制御関連分子のノックアウト細胞では酸化ストレスによる細胞死が亢進したことから、酸化ストレスによるリソソーム分布変化を介したオートファジー誘導は酸化ストレスから細胞を守るための防御応答であることが示された。
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