研究実績の概要 |
オートファジー・リソソーム分解系の研究において、“リソソームによる分解”はどのマルチモードオートファジーにおいても避けられない“分解”を司る必須の過程である。リソソームの主要タンパク質分解酵素の一つカテプシンDの遺伝子は、神経セロイドリポフスチン症原因遺伝子の一つCLN10と同一である。そこで、中枢神経特異的カテプシンD機能欠損モデルマウスの神経変性の発症を解析することにより、神経変性に関わるモードのオートファジーが明らかにできるのではないかと考え、本申請研究を行った。中枢神経特異的カテプシンD機能欠損モデルマウス脳においては神経セロイドリポフスチン症患者と同様に早期からセロイド-リポフスチンの蓄積が認められ、患者脳でも特徴的に認められる、GRODという凝集体が、このモデルマウス脳でも認められた。免疫組織学的にはユビキチン陽性シグナルの増加、オートファジー関連タンパク質(LC3, p62, Nbr1)シグナルの増加が中枢神経組織に認められた。また、活性化したミクログリアおよび活性化したアストロサイトが顕著に増加していた。中枢神経系におけるオートファジー・リソソーム分解系の破綻は、プロテオイノパチーとの関連も考えられるため、パーキンソン病患者で認められるリン酸化αシヌクレイン、アルツハイマー病患者で認められる過剰にリン酸化されたタウタンパク質を調べるといずれも中枢神経特異的カテプシンD機能欠損モデルマウス脳で早期に増加していた。これらのことは、このモデルマウスは神経セロイドリポフスチン症のみならず、中枢神経におけるプロテオイノパチーの発症メカニズムや解析へと応用できる可能性が高い。また、中枢神経組織において非常に有効なビオチンリガーゼを用いた新規超微形態解析法も開発した。いずれも、Scientific Reportsに投稿、現在、リバイス中である。
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