今年度の研究においては、(1)インスリン分泌顆粒分解の適切な誘導条件の検討(2)インスリン分泌顆粒分解レポーターの作成、および(3)CRISPR/Cas9システムによる高効率ゲノム編集Cas9発現膵β細胞株のクローニングを実施した。最終的にインスリン分泌顆粒分解制御因子をゲノムワイドスクリーニングによって同定することを目標とした。 はじめに、クローニングにより樹立したCas9発現MIN6細胞を使用し、既知のマクロオートファジー遺伝子がインスリン分泌顆粒分解にどのように関与しているかについて検討を行った。Atg遺伝子の機能グループに応じて、(1)Ulk1複合体(2)PI3K複合体(3)Atg9複合体(4)Atg5-12複合体に関して、構成分子のノックアウト細胞を作成した。それらをグルコース飢餓刺激後、ウェスタンブロットによるプロインスリン・クロモグラニンAの定量、さらにインスリン分泌顆粒分解レポーターによるインスリン分泌顆粒分解の定量により評価した。 その結果、いずれの複合体の構成因子のノックアウトによってもインスリン分泌顆粒分解は阻害されず、マクロオートファジーの制御機構のインスリン分泌顆粒分解への関与は乏しいものと考えられた。 次に、Cas9およびインスリン分泌顆粒分解レポーターを発現したMIN6細胞にゲノムワイドgRNAを導入して飢餓刺激を行い、EGFPの減弱が阻害される、すなわち分泌顆粒分解が阻害されていると考えられる細胞群をフローサイトメトリーにて濃縮し、次世代シークエンスによって解析した。 現在、それらの結果に基づき、インスリン分泌顆粒分解の制御因子の同定を行っている。候補となる遺伝子のノックアウトMIN6細胞を作成してその妥当性を確認し、機能解析に進むことを計画している。
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