2021年度は、CCR4-NOT複合体の脱アデニル化活性のある構成分子CNOT7とCNOT8を欠損させた膵β細胞を用いたRNA-seq解析とウエスタンブロット法により同定された、オートファジー関連遺伝子のCCR4-NOT複合体を介した転写後制御の分子機構を解明した。CNOT7とCNOT8の発現量阻害に関わらず、このオートファジー関連遺伝子のmRNA発現量は変化せず、その蛋白質発現量が増加していることから、このmRNAの翻訳が亢進していることが考えられた。ポリソームプロファイル法により、このmRNAの翻訳効率を解析したところ、確かにこのmRNAの翻訳が促進していることを明らかにした。また、このオートファジー関連遺伝子のmRNAはm6A修飾されることから、翻訳制御に関与するm6A結合蛋白質YTHDF1のこのオートファジー関連遺伝子mRNAの翻訳制御における役割を解析した。shRNAを用いてYthdf1を欠損させた膵β細胞由来MIN6細胞において、このオートファジー関連遺伝子の蛋白質発現が低下することをウエスタンブロット法により明らかにした。以上の結果から、YTHDF1を介したm6A修飾mRNAの翻訳制御の亢進が、Cnot7/Cnot8欠損膵島におけるオートファジー関連遺伝子の蛋白質発現の増加に寄与している可能性が示唆された。YTHDF1の膵β細胞の機能における機能をYthdf1欠損MIN6細胞を用いて解析したところ、グルコース応答性インスリン分泌が阻害されることを明らかにした。この結果は、YTHDF1を介したm6A修飾mRNAの翻訳制御が膵β細胞の機能の恒常性維持に重要であることを示唆している。さらに現在、MIN6細胞においてYTHDF1と結合するm6A修飾mRNAをm6A-seq解析により同定しているところである。
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