研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
20H05353
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
津久井 久美子 国立感染症研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (00420092)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 赤痢アメーバ / Atg8 / Atg5-12/16複合体 / トロゴサイトーシス / ファゴサイトーシス / ホスファチジルイノシトール3リン酸 |
研究実績の概要 |
赤痢アメーバにおいてオートファジータンパク質Atg8は初期貪食胞に動員されその酸性化に関与する。我々はAtg8依存的に貪食胞へ動員される候補分子の一つがトロゴサイトーシスに関与することを見出している。そこでこの分子の細胞内局在とトロゴサイトーシスおよびファゴサイトーシスへの関与を検討すべく、タグ融合たんぱく質発現株の樹立を目指した。プラスミド作成が終了し、局在の検討を行っている。 これまで我々は生細胞を取り込んだトロゴソームへのAtg8の動員を観察していたが、死細胞を取り込んだファゴソームについては検討が不十分であった。そこでトロゴソームへの動員が知られているVps26とphosphatidylinositol 3-phosphate(PI3P)を加えた3分子について二種類の貪食胞における動員効率を共培養開始後10、30、60分後の貪食胞で検討した。この結果Atg8は10分に40~60%、30、60分ではそれぞれ20%、10%と急激に低下した。Vps26は30分まで70%以上、60分でも50%程度の局在率を示した。Atg8, Vps26の局在効率は二種類の貪食胞で傾向が一致した。一方PI3Pは50~80%のファゴソームへ局在した一方トロゴソームへは50~30%程度と特に30分後では優位に局在効率が異なった。さらにAtg8はPI3Pに先んじてトロゴソーム, ファゴソームへ局在した。よって二種類の貪食胞ではPI3P動員効率が異なり貪食胞成熟過程に差が出ること、赤痢アメーバにユニークなAtg8動員メカニズムの存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
おおむね予定通りであるがAtg5-12/16複合体の解析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
トロゴサイトーシスに関与する分子の解析について、モニター方法を決定し、Atg8による動員のメカニズムの解明を目指す。遺伝子発現抑制株を樹立し、トロゴサイトーシス、ファゴサイトーシスへの関与を明らかにする。 貪食胞成熟過程の解析について、PI3Pがトロゴサイトーシス、ファゴサイトーシスの違いを反映すると考えられる。そこで赤痢アメーバにおけるPI3PエフェクターであるSNXの挙動をさらに検討する。また、貪食胞の酸性化・消化酵素の活性化をモニターし、二種類の貪食胞の質的変化を見出す。 Atg5-12/16複合体結合分子の評価を進める。
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