研究実績の概要 |
マウスの胚盤胞において、外側の栄養膜細胞が胎盤に限局して分化する一方、内部細胞塊細胞は胎児の全ての細胞に貢献し、胎盤組織には貢献しないことが分かっている(Rossant, 2016)。一方、霊長類においても同様に胚盤胞の栄養膜細胞から胎盤組織が発生し、内部細胞塊から胎児組織が発生すると推測されているものの、技術的困難さからこれまで実験的検証がなされていなかった。申請者は非ヒト霊長類に属するカニクイザルの胎盤の発生起源を明らかにする過程で、ヒトTS細胞(Okae et al., 2018)に相当する幹細胞をカニクイザル胎盤および胚盤胞から単離することに成功した。さらに胚盤胞のどの部分からTS細胞が出現するのか検討したところ、内部細胞塊から効率よくTS細胞が出現することが判明したことから、カニクイザルの内部細胞塊にはTS細胞に分化可能な幹細胞が含まれていることが分かった。この実験では、栄養膜細胞を死滅させて内部細胞塊のみにしているため、侵襲性の低い実験をする必要があった。そこで、胚盤胞の外側の細胞層だけレンチウイルスで標識させた後で、TS細胞の樹立を行ったところ、外側の細胞から樹立された例はなかった。 従って、移植実験の結果は待たなくてはならないものの、げっ歯類の胎盤の起源とは異なっているデータがカニクイザルでは集積しつつある。
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