研究領域 | 全能性プログラム:デコーディングからデザインへ |
研究課題/領域番号 |
20H05375
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
関 由行 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (20435655)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 全能性 / 多能性幹細胞 / 胚性ゲノム活性化 |
研究実績の概要 |
本研究では、全能性獲得において重要なステップである胚性ゲノム活性化 (ZGA) を制御する遺伝子カスケードの同定が目的である。これまでに、転写調節因子であるCtbp1/2をES細胞でノックアウトすることで2細胞期胚と類似した特徴を持つ2細胞様が増加することを突き止めていた。そこで、本年度はCtbp1/2 DKO ES細胞において、ZGAのマスター因子であるDUX非依存的に活性化される遺伝子カスケードの同定を試みた。Ctbp1/2/Dux 3重欠損ES細胞で発現が活性化されている遺伝子群の中でも2細胞期胚で活性化される遺伝子群を抽出し、その中でPRAMEL7に着目し解析を進めた。PRAMEL7をES細胞で高発現させたところ、2細胞様細胞が増加することが明らかとなった。一方で、PRAMEL7高発現ES細胞で増加した2細胞様細胞はDuxをKOすることでほぼ完全に消失したため、PRAMEL7はDUXを介して2細胞様細胞の出現を制御していることが分かった。次に、RNA-Seqを用いて、野生型ES細胞、Dux KO ES細胞、PRAMEL7高発現ES細胞、PRAMEL7高発現Dux KO ES細胞間の遺伝子発現パターンの比較を行った。その結果、PRAMEL7高発現Dux KO ES細胞ではZscan4など一部のZGAで活性化される遺伝子の発現誘導は起きていなかったが、CrxosなどのZGAで活性化される遺伝子の一部の活性化が観察された。このことから、PRAMEL7は2細胞様細胞のマーカー遺伝子として汎用されているZscan4やMERVLの発現は活性化しないが、他のZGA遺伝子群を活性化していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、DUX非依存的な胚性ゲノム活性化機構の解明である。これまでに、PRAMEL7がDUXに依存せずにZGAで活性化する遺伝子群を制御していることをすでに突き止めている。
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今後の研究の推進方策 |
PRAMEL7は、DUX非依存的に一部のZGA遺伝子を活性化することをすでに突き止めている。PRAMEL7はロイシンリッチリピート (LRR) を持つが、転写制御因子としての機能は全く分かっていない。そこで、PRAMEL7の結合領域をChIP-Seqで解析し、RNA-Seqの結果と統合してPRAMEL7の標的遺伝子の同定を行い、PRAMEL7を中心とした遺伝子カスケードの同定を行う。また、PRAMEL7によって発現が誘導される遺伝子の発現をシングルセルqPCRで解析したところ、興味深いことに発現細胞と非発現細胞が混在していることが分かった。すなわち、これまで2細胞様細胞のマーカー遺伝子と使用されていたZscan4以外にも2細胞様細胞のマーカー遺伝子が存在する可能性が考えられる。そこで、DUX非依存的にPRAMEL7に活性される遺伝子群の発現を1細胞レベルでモニターするために、EGFPをそれぞれの遺伝子座にノックインする。このEGFPノックインES細胞を用いて、DUX非依存的にPRAMEL7によって誘導される新たな2細胞様細胞の追跡を試みる。これまで、Ctbp1/2の標的としてPRAMEL7に着目して解析を進めてきたが、Ctbp1/2の発現消失でDUX非依存的に発現上昇し、かつZGAで活性化する遺伝子はPRAMEL7以外にも複数存在する。そこで、それら候補遺伝子群の機能解析もPRAMEL7と同様に進める。
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