研究領域 | 全能性プログラム:デコーディングからデザインへ |
研究課題/領域番号 |
20H05376
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
京極 博久 神戸大学, 農学研究科, 助教 (20726038)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 全能性 / 受精卵 / 前核 / 核サイズ / ヒストン / メチル化 / マウス |
研究実績の概要 |
受精卵は精子から形成される雄性前核と卵子から形成される雌性前核と呼ばれる2つの大きな核を形成します。多くの哺乳類で,雄性前核の方が雌性前核よりも大きく異なったヒストンメチル化修飾状態を持つことが知られている。しかしながら,雌雄前核のサイズの違いを生み出す要因や,その生物学的意味はほとんど分かっていない。そこで,本研究では,受精卵の核サイズの違いが,異なったヒストンメチル化修飾の状態を同一細胞内で適切な状態に保つのに必要ではないかと仮説を立て研究を行った。顕微操作により細胞質量を変化させた卵子に顕微授精を行った後,前核のサイズを免疫染色により解析したところ,前核のサイズは細胞質量依存的に変化することが明らかとなった。次に質量分析,モデリング,ライブイメージングを用いて,核サイズの雌雄差を生む原因を探った。質量分析により雄性前核に多く存在するタンパク質を同定したところ,核膜孔タンパク質が多く含まれることが明らかとなった。さらにライブイメージングとモデリングにより核サイズの変化を観察したところ,核膜孔密度が核サイズの雌雄差を生むのに大きく寄与していることが明らかとなった。最後に,顕微操作技術と免疫染色を用いて核サイズとヒストンメチル化の関係を観察したところ,雌性前核は核サイズ依存的にメチル化レベルを変化させますが,雄性前核はサイズが大きくなってもメチル化レベルを維持でき一種の抵抗性のようなものがあることが分かりました。すなわち,雄性前核が核質材料を奪うことで,雌性前核の核サイズを小さく保ち,ヒストンメチル化レベルが必要以上に低下するのを防いでいると考えられます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた実験は全て遂行し、初期胚におけるChIL-seq法の開発も終了した。
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今後の研究の推進方策 |
核サイズが変化したことによる、ヒストンメチル化状態の変化が初期胚の発生および全能性 の獲得にどういった影響を与えるかをChIL-seq、RNA-seq を用いて明らかにする。
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