公募研究
遺伝子機能の制御に重要なメカニズムの一つとして、ヒストンバリアントの存在が挙げられる。H2AヒストンのバリアントであるH2A.Zは、ゲノムの特定領域に導入されることで遺伝子の発現制御を行い、発生・分化・細胞がん化などの高次生命機能の発現にも重要な役割を果たすことが知られている。しかし、ヒストンバリアントH2A.Zがクロマチン上の特定領域に導入される分子メカニズムや、複製後もこのH2A.Zの非ゲノム情報が維持される機構は不明なままである。本研究では、これらの問題に取り組んだ。実験材料として、H2A.Z遺伝子破壊酵母株やテトラサイクリン誘導的にヒストンバリアントH2A.Z発現をシャットダウンできる脊椎動物培養細胞(DT40細胞)などを用いた。H2A.Zの一時的なシャットダウン後に、H2A.Zの発現を回復させて培養を続け、プロモーター領域とgene body領域へのH2A.Zの導入を、クロマチン免疫沈降法と次世代シークエンサーを用いたChIP-seq法で解析したところ、H2A.Z発現のシャットダウンによってH2A.Z導入部位に変化が現れることが観察された。さらに、このH2A.Z導入部位の変化によって遺伝子発現の変化やヒストン化学修飾の変化も生じていた。これらの結果は、H2A.Z導入部位の決定において既存のH2A.Zやヒストン化学修飾が関与していることを示している。さらに、H2A.Zの一過的ノックダウンにより、メチル化ヒストンに結合するPWWP2Aのクロマチン結合についても変化が観察された。
2: おおむね順調に進展している
H2A.Zの一時的なシャットダウン後に、H2A.Zの発現を回復させて培養を続け、プロモーター領域とgene body領域へのH2A.Zの導入を、クロマチン免疫沈降法と次世代シークエンサーを用いたChIP-seq法で解析したところ、H2A.Z発現のシャットダウンによってH2A.Z導入部位に変化が現れることや、遺伝子発現の変化やヒストン化学修飾の変化も生じていることが示された。この実験結果は、H2A.Z導入部位の決定において既存のH2A.Zやヒストン化学修飾が関与していること示すものであり、本研究は現在まで順調に進展していると判断される。
H2A.Zの機能の解析に、H2A.Zのシャットダウンが可能な線虫を用いる。これにより、H2A.Zのゲノム機能、細胞機能における役割だけでなく、発生・分化などの高次生命機能への関与の解析も可能となる。
すべて 2022 2021 2020
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 5件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (31件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Genetics
巻: 220 ページ: iyab218
10.1093/genetics/iyab218
J Biochem
巻: 169 ページ: 237-241
10.1093/jb/mvab006
PLoS One
巻: 16 ページ: e0248381
10.1371/journal.pone.0248381
ACS Chem Biol
巻: 16 ページ: 820-828.
10.1021/acschembio.0c00825
巻: 169 ページ: 295-302
10.1093/jb/mvaa130
Biosci Biotechnol Biochem
巻: 86 ページ: 104-108
10.1093/bbb/zbab190
Biochem Biophys Res Commun
巻: 526 ページ: 1164-1169
10.1016/j.bbrc.2020.04.039
Cells
巻: 9 ページ: 758
10.3390/cells9030758
Sci Rep
巻: 10 ページ: 9008
10.1038/s41598-020-65955-5
Nucleus
巻: 11 ページ: 250-263
10.1080/19491034.2020.1815395
NAR Cancer
巻: 2 ページ: zcaa005
10.1093/narcan/zcaa005