公募研究
ヒストンH3 Lys36のジメチル化(H3K36me2)は遺伝子発現を制御するエピジェネティック修飾であり、その異常は様々ながんを引き起こす。血液がんの一部ではH3K36メチル化酵素NSD2の点変異E1099KによるNSD2活性の異常亢進が見られる一方、リンカーヒストンH1はNSD2の活性を抑制し、一部のリンパ腫に見られるH1遺伝子のミスセンス変異はH3K36me2レベル上昇を引き起こす。本研究では、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析により、NSD2の触媒ドメインがヌクレオソームに結合した複合体の構造を2.8 Å分解能で決定した。NSD2が結合したヌクレオソームはSHL 5.5より外側のDNAが剥がれており、それによりNSD2のH3K36へのアクセスが可能になっていた。H1はヌクレオソームの両側のリンカーDNAと同時に相互作用することによってヌクレオソーム構造を安定化することが知られている。従って、H1はヌクレオソームDNAを剥がれにくくすることでNSD2によるH3K36認識に必要なヌクレオソーム構造変化を妨げ、NSD2の活性を抑制していると考えられる。発がん性変異E1099Kによる活性異常亢進メカニズムを調べるために生化学的解析を行ったところ、E1099K変異はNSD2の触媒回転数を増加させる一方でヌクレオソームへの親和性には大きな影響を与えないことが明らかになった。また、分子動力学シミュレーション解析から、E1099K変異体においては自己阻害ループが開いた構造をとりやすくなっていることが示唆された。これらの結果から、我々は「発がん性E1099Kは自己阻害ループの柔軟性に影響を与え、H3結合に適したコンフォメーションを取りやすくすることで活性を異常亢進させる」というメカニズムを提唱する。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Communications
巻: 12 ページ: -
10.1038/s41467-021-26913-5
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2021/202111sengoku_nc.html