公募研究
DNA複製と非ゲノム情報複製は密接に関連している。これまでDNA複製の研究は出芽酵母が真核細胞のモデルとして研究が進展してきたが、出芽酵母においてはDNA配列が複製開始領域を規定している。一方で、哺乳動物細胞を含む多くの生物では、複製開始領域にコンセンサス配列は見当たらず、染色体構造や非ゲノム情報が複製開始領域を規定しているようである。しかしながら、現在までヒト細胞において高精度の複製開始領域は同定できていない。複製開始領域および複製フォークの向きを同定するには、ラギング鎖上に生じる岡崎フラグメントを回収して、シーケンスすることにより可能である。この目的のために、ヒトHCT116細胞の岡崎フラグメント連結に関与するDNAリガーゼLIG1とLIG3を改良型オーキシンデグロン法AID2で分解除去可能な細胞を作成した。この細胞においては、分解誘導リガンドを添加することにより、細胞内のLIG1およびLIG3を枯渇させ、細胞内に岡崎フラグメントを蓄積させることができる。この細胞を非同調および同調培養を組み合わせて、S期において2時間毎の全ゲノムにおける複製開始領域および複製フォークの移動を検出することに成功した。その結果、S期初期におよそ50kbp以下の解像度で複製開始領域を同定し、これらの多くは転写されている遺伝子のプロモーターに見つかった。S期中期から後期にかけては、明確な複製開始領域は減っていき、次第にヘテロクロマチン領域が複製された。その際には、複製フォークはユークロマチン領域から進行していることが観察された。しかしながら、複製フォークのスピードからヘテロクロマチン領域においても、不明確な複製開始が散発して、複製を遂行していることが予想された。現在、転写と複製開始領域の関連性に関して、どのようなメカニズムで複製開始領域が規定されるのか、詳細な解析を継続している。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Current Opinion in Cell Biology
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