研究領域 | 多様かつ堅牢な細胞形質を支える非ゲノム情報複製機構 |
研究課題/領域番号 |
20H05397
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
立和名 博昭 公益財団法人がん研究会, がん研究所 がん生物部, 研究員 (70546382)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クロマチン / H2A.Z |
研究実績の概要 |
約70%の乳がんはエストロゲン受容体(ER)を発現しており、その増殖にERの機能が必要です。そのため、ERの基質となるエストロゲンの産生を抑制するホルモン療法がER陽性乳がんには有効です。しかし、ホルモン療法を継続していく過程においてホルモン療法耐性となりがん細胞が再び増殖を始めることが知られています。我々は、この再発乳がん細胞においてERをコードするESR1遺伝子座近傍に非コードRNAエレノアが塊(クラウド)を形成していることを報告しています。また、エストロゲン類縁体の添加によりER依存的にエレノアクラウドが消失し、細胞死に至ることを明らかにしています。さらに、エレノアクラウドの消失に伴いESR1遺伝子座近傍のクロマチン構造が変化することを見出しています。以上のことから、ホルモン療法耐性再発乳がん細胞においてESR1遺伝子座には、非コードRNAを中心とした非ゲノム情報ネットワークが形成されていることが分かります。しかし、これらが協調的に複製・維持される分子機構は明らかではありません。そこで本研究ではホルモン療法耐性再発乳がん細胞のESR1遺伝子座近傍の非ゲノム情報複製機構を、非コードRNAエレノアおよびヒストンを中心とする非ゲノム情報の解析を行いました。ホルモン療法耐性再発乳がんモデル細胞を用いて、エレノアクラウドをエストロゲン類縁体の添加により消失させ、その前後において非ゲノム情報の変化を解析し、エストロゲン類縁体依存的に非ゲノム情報が変化する遺伝子を見つけました。されに、それらはエストロゲン類縁体により転写が抑制されたことも分かりました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
同定したエストロゲン類縁体依存的に非ゲノム情報が変化する遺伝子はエストロゲン類縁体により転写が抑制されたことが明らかとなった。そして、これらの遺伝子は特定のエピジェネティック試薬の添加によっても同様に非ゲノム情報が変化することを明らかにしている。これらは新しい転写制御機構であることが考えらるため。
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今後の研究の推進方策 |
非ゲノム情報が変化したことが分かった遺伝子において、具体的なエピゲノム情報の特定を行う。さらに、RNAポリメラーゼIIの局在を解析することにより、転写制御機構を明らかにする。また、細胞の種類を変えて、同様の遺伝子があるか解析を行う。
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