研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
20H05407
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
近藤 侑貴 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70733575)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 概日時計 / 発現振動 / タイムラプスイメージング |
研究実績の概要 |
維管束幹細胞の新規制御因子を探索するために、これまでに維管束分化誘導系VISUALを活用した順遺伝学スクリーニングにより、概日リズムの周期が短縮する変異体bss1が分化を抑制するbes1変異体の表現型を回復することを見出した。本年度は、概日リズムの周期の短縮と維管束幹細胞分化の促進との関係性の詳細を明らかにするため、他に概日リズムの周期を乱すことが知られている既知の変異体と幹細胞分化が抑制されるbes1変異体との掛け合わせをおこなった。当初の予想とは異なり、概日リズムの短周期化・長周期化は幹細胞分化を促進しないことが、維管束分化誘導系VISUALを用いた遺伝学解析から明らかとなった。一方でBSS1遺伝子とBES1遺伝子の間に直接的な関係性が示唆され、概日時計と植物ホルモンシグナルがBSS1を介して統合されている可能性が見いだされた。 一方で、幹細胞関連遺伝子の発現オシレーションに関しては、複数のVISUALトランスクリプトームデータを組み合わせた共発現ネットワーク解析から維管束幹細胞のステージで発現する遺伝子群約60個を単離することができた。今年度は、これら幹細胞で発現する遺伝子のプロモーターにルシフェラーゼをつなげたレポーターを作成し、篩部蛍光レポーターをもつ植物体に形質転換をおこなった。これまでに5ラインほどのT2世代を、また40ラインほどのT1世代を経た。来年度、作成したラインを発光顕微鏡下でVISUAL誘導をかけながらの経時解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
bes1変異体と概日時計制御遺伝子の変異体との遺伝学解析からは、当初の予想とは反し、概日リズムの短周期化は維管束幹細胞分化を促進しないことが明らかとなった。一方で、単離したBSS1遺伝子は、ブラシノステロイドシグナリングにおいても機能することが明らかとなり、BES1遺伝子との直接的な関係性がみえてきたことから、概日時計と植物ホルモンとの関連性が新たに示唆された。 また、幹細胞で特異的に発現する遺伝子群の発現振動をとらえるための生物情報学的な遺伝子の絞り込みやそれらのLUCレポーターのコンストラクトはほとんど作成を終え、形質転換植物も予定どおり揃い始めている。
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今後の研究の推進方策 |
新たに可能性が示されたBSS1による概日時計と植物ホルモン(ブラシノステロイド)シグナリングの統合を生化学、遺伝学的に検証していく。ブラシノステロイドシグナリングが概日時計依存的な振動を示すかどうかも、発光レポーターの経時的な測定を通して検証していきたい。変異体等による表現型解析からシグナル統合の意義にもせまっていきたい。 また、昨年度形質転換をおこなった維管束幹細胞特異的な発光レポーターの植物体を順に発光顕微鏡下で観察をおこなっていく。VISUAL誘導をかけたときに、プロモーター活性に振動がみられるかどうかを調べ、その後蛍光レポーターの分化マーカーを用いて最終的な分化運命を調べることで運命トラッキングが可能となる。これら運命トラッキングを通して、幹細胞関連の遺伝子発現振動と将来の分化運命との関連性を明らかにしていく。
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