公募研究
先端成長は、コケ植物やシダ植物では原糸体細胞、被子植物では花粉管や根毛など陸上植物共通に見られる伸長様式である。先端成長細胞の伸長や屈性の解析は、これまで細胞の長さや角度計測という限られた情報のみで伸長速度や屈曲角度が算出されてきた。本研究では、有機合成科学、マイクロデバイス技術、画像解析技術など異分野技術を駆使して先端成長細胞の曲率変動解析を行う。これらの解析を通じて、従来の計測方法では記述できない先端成長の性質を明らかにし、本解析を通じて従来の先端成長の定量解析に新たなスタンダードを創出することを目的とする。さらに、光や化学物質などの環境刺激による先端成長細胞の屈性を曲率変動の変調として可視化し、植物の環境応答戦略の理解に繋げることを目指している。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、先端成長細胞の曲率変動周期の解析を行うため、独自に新規開発した近赤外蛍光性細胞壁可視化プローブを活用している。この近赤外蛍光性細胞壁可視化プローブは、汎用の蛍光タンパク質だけでなく、クロロフィル自家蛍光とも容易に区別できる長波長発光性を示し、曲率変動解析に必要な二値化処理に十分なシグナルノイズ比で細胞輪郭を染色できることを明らかにした。さらに、先端成長する細胞のライブイメージング解析により細胞形態変化を高精度に捉えることにも成功した。そこで、研究協力者の協力のもと、直進する先端成長細胞の先端部の曲率変動解析を行い、先端部の曲率変動と曲率極大部の法線ベクトルを得ることに成功した。さらに、近赤外蛍光性細胞壁プローブは、1300 nmのレーザーを利用して二光子イメージングによる深部イメージングにも利用できることを示した。
これまでの研究で先端成長細胞の曲率変動解析の方法論の目処はたった。しかし、視野内での周期数が不足により周期性や変調に関して十分なデータが得られないため、動体追尾顕微鏡システムの構築が必須という新たな課題が浮かび上がった。そこで、今後は動体追尾顕微鏡システムを構築し、先端成長細胞の周期性やその変調を検出する計画である。動態追尾顕微鏡データによる曲率変動解析を軌道に乗せ、先端の曲率変動とカルシウムイオン動態や細胞骨格動態との相関解析を進め、新規表出パターンの発見に繋げることを目指す。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
Nature Communications
巻: 12 ページ: 2650
10.1038/s41467-021-23019-w
Science
巻: 369 ページ: 698-702
10.1126/science.abc3710