公募研究
それぞれ1/3(120度),3/8(135度)2/5(144度)の螺旋状葉序を示す,ヨツバゴケ,エゾスナゴケ,ヒメツリガネゴケについて,頂端細胞から分裂した1つの派生細胞に由来する細胞群(メロファイト)について,個々のメロファイトの重心と頂端細胞の重心がなす角度を測定し,葉序と頂端細胞の分裂方向の周期的旋回角度の相関について検証した.メロファイト同士のなす角度(発散角)は,メロファイトが成長する過程で次第に葉序に近い角度に収束することがわかった.また頂端細胞の近傍では,メロファイト同士の発散角が,葉序角度に対し,特徴的な偏差を示すことが明らかになった.この特徴的な偏差は,頂端細胞が分裂するごとに頂端細胞の重心位置が遷移することと関係しており,シミュレーション上で頂端細胞とメロファイトそれぞれの一定の分割面角度推移とスケーリング成長を仮定することで再現することができた.これにより,頂端細胞の分裂方向の周期的旋回が存在し,その角度の違いが植物種ごとの葉序の決定に寄与していることが初めて証明できた.この研究成果は,領域内の共同研究者と共著の論文としてJournal of Plant Research誌に投稿し受理された.頂端細胞と周辺部の立体的観察のための組織透明化技術の各種コケ植物への適用を進め,共焦点レーザー顕微鏡を用いたメロファイト配置の立体的配置の解析を進めた.中心体局在性のタンパク質の1つであるセントリンについて,ゼニゴケを用いて遺伝子機能欠損株の表現型の観察を進めた.細胞板に局在する陸上植物型のセントリンの遺伝子機能欠損株では,植物体が不定形になるが,その原因が細胞板の発達や合着位置の異常であることが明らかになった.
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた,細胞内の微細構造の立体的配置の研究には大きな進展を得ることができなかったが,領域内の研究者と新たな共同研究を進めることで,これまでの研究成果を数理生物学的な解析を含めた視点で原著論文としてまとめることができた。
植物頂端部位の立体的観察を行い,細胞の外形と配置を観察することに加え,細胞壁の組織化学的解析,各オルガネラの立体配置の基本的データを取得する.核,細胞壁,色素体,ミトコンドリア,中心体様構造など各構造を染色・可視化する.得られたデータは領域内の共同研究者らと共有し,頂端細胞の周期的分裂制御,葉序形成の立体的シミュレーションを構築する.電子顕微鏡レベルでの頂端細胞の微細形態観察,実験的研究を進める.細胞壁の微細形態,内的振動子の候補として有力な,中心体用構造,色素体について立体的に可視化する.
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Plant Research
巻: 134 ページ: 457-473
10.1007/s10265-021-01298-0
New Phytologist
巻: 229 ページ: 735-754
10.1111/nph.16874