研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
20H05420
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
武宮 淳史 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80448406)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 気孔開口 / 概日時計 / フォトトロピン |
研究実績の概要 |
本研究では、植物の気孔を構成する孔辺細胞が、光シグナルや概日時計などの外的・内的シグナルを感知・統合し、気孔開閉の周期構造を形成する分子メカニズムを解明することを目的としている。本年度は、光シグナルによる気孔開口のメカニズムに関して新たな知見を得た。光による気孔開口には光合成に依存したメカニズムと青色光受容体フォトトロピンに依存した青色光特異的なメカニズムの2つが存在する。さらに両者には相乗効果が存在し、これらのメカニズムが同時に作用することで大きな気孔の開口が誘導される。しかし、その仕組みについては不明な点が多い。我々は青色光シグナル伝達が恒常的に活性化された形質転換体を作製することに成功し、この形質転換体を用いた機能解析から、光による気孔開口には青色光シグナル伝達に加え、光合成の炭素同化による葉内CO2濃度の低下が同時に起こることが重要であることを示した。つぎにこれらの気孔開口メカニズムの中でどのメカニズムが概日時計による制御を受けるかを調べるため、白色光の明暗条件で生育させたシロイヌナズナを連続暗条件、連続白色光条件、連続青色光条件、および連続赤色光条件に移し、気孔開閉の周期性を調べた。その結果、連続暗条件では自発的な気孔開閉は見られなかったが、連続白色光条件では光が常に存在するにも関わらず、暗期の時間帯で自発的な閉鎖が見られた。このような自発的な気孔開閉の周期性は連続青色光条件でも見られたが、光合成に依存した気孔開口が誘導される連続赤色光条件では認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
気孔開閉の周期構造の形成メカニズムとして、青色光シグナル伝達と光合成炭素同化によるCO2シグナル伝達のクロストークが働くことを示し、概日時計は光による気孔開口の中でも青色光に依存したメカニズムを制御する可能性を見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は概日時計が青色光による気孔開口を制御する詳しいメカニズムの解明を進めると共に、領域内の連携研究により概日時計による転写制御を受ける因子群の解析を進め、気孔開閉の周期構造の形成メカニズムの解明に迫りたい。
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