気孔の開閉は光の有無のみならず、概日時計によっても制御されることが知られており、本研究ではこのような光と概日時計のクロストークにより表出する周期構造の形成メカニズムの解明を目的としている。本年度はこのような気孔開閉の周期性を長時間に渡り高い分解能で自動的に測定する系の確立に取り組んだ。気孔が開口すると蒸散による気化熱により葉面温度が低下する。この現象を原理として、赤外線サーモグラフィを用いて気孔開閉の周期性を熱画像を利用して検出することを試みた。外気温は1日のうちで10℃以上の幅をもって日変化するのに対して、気孔開閉に伴う葉温は0.5℃ほどしか変化しない。このような外気温の変化にマスクされ意図した気孔開閉の周期性を捉えることが困難であったが、系の至適化を進め測定環境の温度変化を極力抑えることで、気孔開閉の周期性を捉えることに成功した。外気温は早朝に最低となり正午過ぎに最高となる日変化を示すのに対して、シロイヌナズナの野生株を恒明条件に移した場合、葉温は明期の始めから中間にかけて最低となり、明期の終わりにかけて最高となる変化を示した。これは気孔が明期の始めに開口し明期の終わりにかけて閉鎖することを意味しており、気孔開度測定の結果と一致する。さらに領域内の共同研究を通じて、熱画像から気孔開閉の周期性を精度よく抽出するシステムの開発に着手し、熱画像全体から葉の部分の温度のみを自動抽出・計測することが可能となった。
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