研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
20H05421
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中益 朗子 熊本大学, 国際先端科学技術研究機構, 特任助教 (70614767)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 形態形成 / 数理モデル / 葉の形 |
研究実績の概要 |
これまでに葉の形態形成、主に葉で見られる枝分かれのパターンについてなるべくシンプルなモデルを用いて説明することを試みてきた。具体的に縁の周期パターン依存的に形状を成長させるモデルを用い、葉の発生時に辺縁細胞の成長を伴う場合と伴わない場合について、ごくシンプルな二つのアルゴリズム(①付加成長と②拡大成長)を用いて表した。本年度は葉縁における周期的なパターンに加え、 (1)葉身上の別の位置情報による成長の変調 (2)成長からのフィードバックを受けた位置情報の変調 の二点に関して研究を行う予定であった。基部から単軸性の勾配状の位置情報を与え、生じる形状のロバストさを前者①のアルゴリズムを用いて説明した。また後者②の成長様式については、同じ位置情報に対して多様性を生じる原因となりうることを示した。この研究に関して、発生生物学会のOnline Trial meetingで発表を行った。 加えて、(2)に関しては葉身上における位置情報の候補として反応拡散パターンを計算する枠組みを整えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は新型コロナウイルス感染症流行のため、ネット環境の不備など含め、新学術領域において推奨される共同研究の実施に困難を感じた。オンラインを活用した共同研究のマッチングなど開催されたが、議論・情報収集・成果発表などを行うことが難しかった。学会等の研究集会の中止・オンライン化に伴い、旅費など経費の繰り越しや使用用途の変更が余儀なくされた点も影響し、報告書の提出が次年度となった。 進捗に関して、上記課題のうち(1)は線形の定まった勾配を与えた場合と、葉身上で反応拡散方程式を用いた計算を行った場合について比較した。 前者においては成長様式の違いに応じた位置情報に対する応答の違いを確認した。また後者では葉形の輪郭の成長に伴い位置情報が変化するため、得られる多様な形状について研究を行った。また(2)は、細胞の成熟時期と細胞サイズの違いに着目したシミュレーションの改変を試みた。これら数値的な解析のためにノート型パソコンなど購入し、またオンライン会議等への環境を整えた。実験についても、研究に用いる植物のための器具等購入し、栽培を行った。
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今後の研究の推進方策 |
上記課題について、(1)は主に成長する二次元平面上でのパターンの挙動に着目した解析と、それによって生じる形状の違いについてシミュレーションを用いた研究を進める。また(2)について、辺縁細胞の成熟時期に着目したモデルを用いて、裂片形状と辺縁細胞のサイズに着目した研究を進めたい。これに関連して、研究室内における葉の裂片形状の解析用の植物の育成があまりうまくいっていないため、栽培方法についてのアドバイスを領域内研究者(池内氏)からもらった。また、具体的なデータについては、すでに出版されている論文なども参考にする[Kawamura et al. 2010, Ikeuchi, et al. 2013]。上記課題について、翌年度へ延期となった国際学会(Pacifichem)における発表準備を進めたい。 さらに共同研究に関しても将来的な準備を進めつつ、本領域における上記申請課題を推進したい。
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