本研究では、概日リズムの時空間ダイナミクスを精細に計測することで、多様な外部入力と細胞間相互作用における応答性を定式化し、植物の環境応答と発生に関する時空間統合モデルの構築を目指した。 2021年度は、1)多種類のPRCの計測(後半)を行った。【目的】前年度に確立した手法を用いて、様々な因子(計12種)に対する個体ならびに各部位(計4種)のPRCを求めた。【方法】以下の多種類のPRCを計測した(主に、SR-PRC法を利用した)。●環境因子(光〔青/赤色、強度別〕、温度〔加温、冷却〕)計6種×部位4種=PRC計24個、●化合物・シグナル分子(ショ糖、glyphosateなど)計6種×部位4種=PRC計24個。 また、2)成長点における概日リズムの位相リセット現象へのPRCの導入を行った。【目的】成長点では強烈な概日リズムの位相リセットが発生しており、恒常条件(DD条件ならびにLL条件)においてストライプ状の位相波が発生する。さらに、根における成長点は主根の先端だけでなく、側根として追加形成されるため、長期間に渡る時空間ダイナミクスには強い内部ノイズが発生する。この内部ノイズの特性を解明することは、植物の高度な環境応答と器官発生の連動ダイナミクスを解明する手がかりとなる。そこで、成長点に生じる概日時計の位相リセット現象の数理モデルに、PRCを導入した改良型の数理モデルを構築した。【方法】開発した数理モデルを基に、特に「概日リズムの位相リセット」と「細胞周期」の関係について分子レベルのメカニズムを捉えつつ、ダイナミクスの機構を結合振幅方程式へと簡略化して数理モデル化した。さらに、計画班・公募班の専門家からの助言により生物学的な補完を行った。
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