研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
20H05426
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
塚越 啓央 名城大学, 農学部, 准教授 (30594056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 側根発達 / 概日リズム / イメージング / VLCFA / DNN |
研究実績の概要 |
本研究では概日リズムによる側根発達と、その周期に変調をもたらす極長鎖脂肪酸(VLCFA)の役割をイメージングやDeep Neural Network(DNN)を用いた機械学習によるモデル化を通じ、側根発達の変調機構を明らかにすることを目的とする。この目的を達成するために、(1)概日時計因子群による側根発達制御系の解明、(2)bHLH39の側根形成に関する機能解析、(3)DNNを用いた側根発達のモデル化を中心に研究を進めた。 (1)概日時計因子群による側根発達制御系の解明: 概日時計プロモーターとLUCを融合したレポーターを用い、根でのVLCFA阻害剤によるリズム変動を調べた。その結果VLCFAは概日リズムを短周期化した。時計変異株の側根数を測定したところ、ある位相の時計変異株では出現する側根数の減少が観察された。また、VLCFA合成変異株を用いて、時計因子の発現を調べたところ、時計因子の発現変動も確認された。以上のことからVLCFAが概日リズムの周期変動に影響を与えることがわかった。 (2)bHLH39の側根形成に関する機能解析:bHLH39遺伝子破壊株の側根数は野生型に比べ側根のステージの変位が早くなっていることがわかった。bHLH39が側根発達のどの時期に関わるかを調べるためにbHLH39プロモーターとGFPとのレポーターラインの作成を進めた。また、bHLH39の発現の周期性を調べるためにLUCとのプロモーターレポーターの作成も進めた。 (3)DNNを用いた側根発達のモデル化: 側根の発達は時間に沿って変動していく。その変動していくステージ間のスピードを定量するためにタイムラプスイメージングを用いたDNN学習を行なった。958枚の画像を用いてResNET50により画像の学習をさせた。その結果、人間の目で行なったステージ分類と同程度の確度で側根ステージの自動検出結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)概日時計因子群による側根発達制御系の解明 VLCFAが概日リズムに変調をもたらすことを証明できた上に、概日時計変異株で側根の発達様式に異常が出ることもわかった。また、概日時計の変調はある処理を行うことで、特定の時期で止まることも見出すことができた。この概日リズムの変調はVLCFAを阻害することで亢進されることも見出すことができた。このような概日リズムが止まる現象は植物ではほとんど報告されておらず、全く新規な時計制御系の発見と言える。 (2)bHLH39の側根形成に関する機能解析 bHLH39が側根の発達に関わることを見出すことができた。また、(1)で発見した概日リズムが停止する条件下では概日リズムの停止より前にbHLH39の発現が強く抑制されることもわかった。以上のことから鉄の恒常性に関わる因子群が概日リズムの変調に重要である可能性を強く示唆することができた。 (3)DNNを用いた側根発達のモデル化 当初の予定より早く、正確なDNNによる側根発達の各ステージの認識が可能となった。さらにステージの認識のみならず、各ステージ間の移行に関わる時間情報を組み込むことも可能となってきている。DNNによる解析が可能となればさまざまな変異株の画像を取得するのみで側根発達スピードを定量化することができ、今後の研究に大きく貢献できると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度に作成したリソースやDNNを用い、概日リズムによる側根発達と、その周期に変調をもたらすVLCFAの役割を明らかにする。 (1)概日時計因子群による側根発達制御系の解明: 概日時計が停止する条件を用い、さまざまな時計変異株での遺伝子の発現変動をRNAseqを用い網羅的に解析する。時計が止まることにより、どのような遺伝子群に影響が現れ、どのように側根の発達が異常になるかを見出す。また、概日リズムの停止を引き起こす上流因子の探索も開始する。概日リズムの停止の細胞種特異性の解析も進める。時計遺伝子LUCレポーターのリアルタイム発光解析を神戸大学の近藤准教授を共同研究者として進める。 (2)bHLH39の側根形成に関する機能解析: 作成したbHLH39プロモーターLUCレポーターラインを用いてbHLH39の発現周期を調べる。概日リズムの停止する条件を用いてbHLH39遺伝子破壊株の側根発達の表現型を調べる。以上の解析から鉄の恒常性と概日リズムの変調機構の分子メカニズムを明らかにする。 (3)DNNを用いた側根発達のモデル化: DNNに供与する画像数を増加させ、さらなる精度向上を目指す。実際にVLCFA合成阻害剤処理やVLCFA合成変異株、概日時計変異株の側根発達スピードの変調をDNNにより検知する。これらの結果より側根発達のスピードの定量化を進める。
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