研究領域 | 高速分子動画法によるタンパク質非平衡状態構造解析と分子制御への応用 |
研究課題/領域番号 |
20H05433
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 明大 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (20781850)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | X線自由電子レーザー / 結晶構造解析 / 試料環境セル / グラフェン |
研究実績の概要 |
どのような測定手法であっても、新たな科学的知見の創出につながる性能向上が常に求められている。本研究課題では、バックグラウンド信号の小さな試料ホルダを新たに開発することで、動的結晶構造解析の高感度化を目指す。以下の3つの項目に分けて、2020年度の研究実績の概要を述べる。 1. 窒化ケイ素(SiN)膜:リソグラフィ技術を利用した作製工程の最適化により、従来と比較して厚さが1/4の50 nm SiN膜を利用しても、試料ホルダを安定的に作製できるようになった。X線レーザー計測の結果、SiNの薄膜化によってバックグラウンド信号を1/5までに低減できていることが分かった。また、今までは無視できていた薄膜の微小な表面粗さに起因するバックグラウンド信号も確認した。この結果は、試料ホルダの作製工程にフィードバックする予定である。 2.グラフェン:広い範囲に渡ってフリースタンディングが可能なグラフェンの合成条件を探索した。さらに、TEMグリッドに転写したグラフェンの表面を電子顕微鏡によって観察し、バックグラウンド信号の原因になり得るコンタミネーションの形状、ならびに構成元素の解析を実施した。 3. SPring-8における真空測定装置の立ち上げ:計画班B01(山本班)とともに、真空かつクライオ環境のタンパク質結晶を測定できる装置をSPring-8 理研ビームラインBL29XULで立ち上げた。真空環境に試料を配置することで、従来装置と比較して高感度化が期待できる。まずは、様々な装置の構成要素の最適化や光学系のアライメント手順の確立を目的に実験を実施した。さらに、TEMグリッドに転写したグラフェンに由来するバックグラウンド信号を計測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
窒化ケイ素やグラフェンを利用した試料ホルダの作製、ならびに放射光X線やX線レーザーを利用したバックグラウンド信号の取得に成功したため。さらに、研究計画時には具体化されていなかった計画班と連携した高感度測定装置の開発も進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
1. SiN膜:作製工程に原子間力顕微鏡による表面計測を加え、事前に高品質なホルダのみを選別することで、より効率的なビームタイム利用を目指す。
2. グラフェン:収差補正走査型透過電子顕微鏡を用いて、より高感度かつ高空間分解能で表面状態を評価する。放射光X線やX線レーザーによる計測も並行して実施し、バックグランド信号とグラフェンの表面状態を関連付け、作製工程にフィードバックする。
3. SPring-8での基礎実験:計画班とともに立ち上げた装置を利用して、オングストローム領域におけるSiN膜とグラフェンのバックグラウンド信号を評価する。さらに、リゾチーム結晶を試料に用いて、高感度X線結晶構造解析の実証を目指す。
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